20~21年秋冬ミラノ・コレクション「グッチ」ファッションを祝福

2020/02/21 06:30 更新


 【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】20~21年秋冬ミラノ・コレクションは、新型コロナウイルスの影響を受けて日本人渡航者がプレスもバイヤーも半分近く少ない状態で始まった。対面のインタビューを自粛するブランド、PRの渡航をやめたブランド、契約しているフリーのバイヤーに買い付けを任せる店など、状況を判断しながら各社が対応に追われたのがうかがえる。混乱も懸念されたが、平静を保っている状況だ。そんななか、ミラノのハイライトともいえるグッチがファッションを賛美する祝福のコレクションを披露した。

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 グッチの会場に入ると、白いバスローブに身を包んだモデルたちがヘアメイクをしている。いきなりバックステージに案内されるという趣向。ショーの背後にある空間もむき出しにして見せるという、アレッサンドロ・ミケーレによるコンセプトだ。

 バックステージを抜けてショー会場に入ると、ピンクのカーテンで円形に仕切られたまわりに客席が作られている。着席して待つと白いバスローブのモデルとグレーのユニフォームを着たフィッターたちががピンクのカーテンの奥へと並んで入っていく。ピンクのカーテンが落ちると、霧が立ち込める空間の様子が次第に明らかになる。

グッチ
グッチ

 そこはモデルたちのフィッティングルーム。メリーゴーランドのように回転する舞台で着替えをして並び出す。レースのブラウスにプリーツスカート、プリントドレスとフェイクファーのコート、破れたジーンズのカジュアルなラインからボーンを入れて立体的に膨らませたマキシスカートまでが揃う。人形のような黒いアイライン、デビルのようにとがった耳のヘッドピース。体を拘束するハーネスがビジュードレスやチュールドレスに重ねられ、美しくも毒をはらんだスタイルが現れる。

 その創造の裏側にある、作り手たちの思いや職人たちの仕事ぶりまでをあらわにしようとする演出。モデルが全員並んで、歩いて立ち去ると、そこにはグレーのユニフォームを着たフィッターたち。奥にはミケーレの姿も見える。「そこは私の崇拝する家。美が殻を破って生まれてくる、祝福された場所」(アレッサンドロ・ミケーレ)。

グッチ
グッチ
グッチ

 ジル・サンダーは静かで凛(りん)と張り詰めた空気で描くエレガンス。スリップドレスやラップコートなど、ほとんどのアイテムは黒か生成りで描かれる。しかし、そのシンプルなラインがひそやかな美しさを主張する。

 ニットのノースリーブトップはケープのようなニットパーツがアシンメトリーに体を包み、モヘヤのクロシェドレスの繊細な編地が上質さと軽やかな透明感を生み出す。たくさんのストリングスを揺らしたドレスにタッセル飾りのヘムのスカート、ニットドレスのヘムに描くマクラメの装飾。手仕事の持つ力が糸のテンションとともに心地よく揺れる。ダブルフェイスカシミヤのポンチョは、その上質なタッチとミスマッチなアイテムの選び方が楽しい。

 テーラードスーツは襟を取り外してミニマルにすることで、構築的なカットを強調する。キルティングのコートを重ねたスタイルはまるでライナーを表に出してきているよう。インサイドアウトの着方なのかもしれないが、しっとりとして違和感を感じさせない。わずかに加えたイエローや赤やミントのアイテムもけっして饒舌(じょうぜつ)ではなく、静かに美しさを物語る。

ジル・サンダー

(写真=大原広和)

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