【ロンドン=小笠原拓郎】20~21年秋冬ロンドン・コレクションは、自らのオリジンともいえるスタイルをどう守り、発展させるかが焦点となった。伝統はときに新しい美しさを模索する足かせにもなり、ときに自らのブランドの方向性を示す指針にもなる。今の時代にふさわしい新しい女性像を描くときに、自らのオリジンをどう生かせるか。ロンドン4日目は、その明暗が分かれた。
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バーバリーは新型コロナウイルスの問題に配慮して、アジアのスタッフとバーバリー側が招待するアジアのインフルエンサーの来場を取りやめ、厳戒態勢でショーに臨んだ。
メタリックな舞台に2台のピアノの音色が流れるなか、レイヤードや柄の切り替えを軸にしたスタイルが揃う。リカルド・ティッシによりリブランディングを進め、前シーズンは一気にラグジュアリーな方向にかじを切った。しかし、バーバリーの顧客や伝統との間でやや違和感を感じていたのも事実。この秋冬は、バーバリーの伝統と描きたいグラマラスな女性像との間で、より上手な着地点を見つけた。
例えばそれはチェック柄を重ねるスタイル。タータンチェックがジレやパーツでジャケットに重ねられ、たくさんのチェック柄をレイヤードや切り替えでドレスに仕上げていく。バーバリーの伝統ともいえるトレンチコートは、襟の部分からバックにたっぷりのフェイクファーをのせていく。
スーツやパンツスタイルはシンプルでシャープなカットでありながら、同色の布をカマーバンドのようにぐるぐるとウエストに巻き付けてエレガントに見せる。前シーズン、ほとんどなくなったカジュアルなガールのラインは、ラグビーシャツのイメージを背景に復活している。
太いボーダーストライプのシャツドレスは、丸くカットアウトされた身頃とともに、ストライプがねじれ動きを作る。スポーツからエレガンスまで、バーバリーらしさを背景にしたコレクション。問題はこのコレクションが、巨大販路である中国でどう展開されるかにかかっている。
JWアンダーソンは、新しいフォルムとスタイルに挑んでいる。かつてのジョナサン・アンダーソンであれば、ロンドン・コレクションの中ではミニマリズムの先鋒と見られていた。しかし、ここ数年、装飾がどんどん広がったのに続き、なおも新しいスタイルを模索している。
今回はアート作品を思わせるボリュームのあるスタイル。ヘムにギャザーを入れてバルーン状のフォルムを作るドレス、大きな三角の襟からテントラインに流れるコートなどを揃えた。ケミカルなブークレ糸をフリンジのようにショルダーに飾り、ごわごわしたモール糸でフェザーのようなボリュームを作る。きらきらしたケミカル糸の光沢と量感のフォルムで、新しい女性像を模索している。それが今の時代を象徴するフォルムにまでたどり着いているかどうかは別だが、その新しさを模索する精神が次につながると思いたい。
(写真=バーバリーは大原広和、JWアンダーソンはブランド提供)
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