キミノリモリシタ(森下公則)は「80 pieces of history」と題したインスタレーションで見せた。03年春夏に誕生したブランドの歩みをたどるストーリー。テーラーリングや日本の伝統的な染色・加工技術を背景にした独自のスタイルを紹介した。
(小笠原拓郎)
そのアーカイブを見ると、森下の審美眼と現場主義の姿勢をうかがい知ることができる。パッチワークされたレザー、生地に織り込まれたチェーン、ブリーチやダメージとともにはぎ合わされたデニム、色を抜き再び重ねた加工。職人たちの手仕事の技を背景にした、男っぽいアイテムが揃う。それは、ある時は荒々しく、またある時はロマンティックにも見える。

東京でコレクションを見せていた時期、パリへ舞台を移した時期、いったんブランドを休止して再開した時、それぞれで少しずつニュアンスが変わる。技術を積み重ね、たどり着いた現在のコレクションは、よりそぎ落とされシンプルになっているのが分かる。そこに通じるのは、森下自らが現場に入り、職人たちとともに作り上げる姿勢だ。

問題は、こうした日本の誇る技術が徐々に失われつつあること。ブランドを再開した時に、森下は過去の技術が次々と失われていることに驚いた。「10年前にできた生地がもう作れない。生地をシェイビングする職人がもういない」。そんな産地の抱える現実がクリエイションに重くのしかかる。

希望は、現在のコレクションを仕入れ始めた若いバイヤーたちだ。美しい手仕事を若い世代へとつなげていく橋渡しになろうとしている。過去を見つめながら、未来へと思いをはせる機会となった。
