【パリ=小笠原拓郎】19~20年秋冬パリ・メンズコレクションは、エレガンスをどうモダンに表現するかが問われている。男性服のエレガンスとなると、その中心はテーラードスタイル。スーツをモードとしてどう見せるかが課題となる。ビジネスツールとして安心なユニフォームではなく、古くさい男らしさの象徴でもない、今の時代にふさわしいデザインが求められている。
(写真=catwalking.com)
【関連記事】19~20年秋冬パリ・メンズコレクション 若手のショー相次ぐ
ヴァレンティノのショーにデビッド・ボウイの「スペース・オディティ」が流れる。UFOのモチーフ、肖像画、どこか冷たい空気の漂うグラフィックをプリントやジャカード、インターシャでさまざまなアイテムにのせていく。宇宙のモチーフのグラフィックは「アンダーカバー」によるもの。昨年末の東京でのイベントでも両者は協業した。秋冬もその流れからか、ダブルネームのグラフィックがヴァレンティノのハンドテクニックを生かして表現される。

グラフィックに目が向く一方で、カッティングではフルイド(風をはらんで揺れる)ラインがポイントとなる。スーツと合わせるシャツは裾を出して、ジャケットとともに優しく揺れる。柔らかなコートもサイドにスリットを入れて、流れるようなシルエットを描く。ヴァレンティノの持つ手仕事のエレガンスが、アンダーカバーのクールでポップなグラフィックと重なることでモダンに変身した。


一方、アンダーカバーのショーは中世を思わせる重厚なアイテムを鮮やかな色で描く。羽根飾りの帽子にフードの付いたマント、手にはレーザー光線を発するステッキを持つ。しかし、中世を思わせるスタイルは、切り替えニットやスウェットのコンビネゾンといった現代の服へと変わる。
そこにアクセントとなるのは映画「時計仕掛けのオレンジ」のプリント。ショーの後半はヴァレンティノのショーにも登場したUFO柄やグラフィック。アンダーカバーの服にそれがのせられると、より軽やかな雰囲気になる。
