ウクライナにルーツを持つユーリー・ビラク氏の写真展「ウクライナ フツルの民族衣装」が、5月6日まで京都駅前のワコールスタディホール京都ギャラリーで開催されている。いや応なく戦争に注目が集まるが、「素朴でのどかな生活や美しい民族衣装が残るウクライナの魅力をもっと知って欲しい」とのビラク氏や関係者の思いから展示会を企画。アジアで初めてとなる。
フツルの人たちは、ウクライナから周辺国にまたがる全長1500キロのカルパチア山脈沿いに住む民族で、素朴な生活を今も営んでいる。ビラク氏は現在、パリを拠点に活動を行っているが、両親がウクライナ人で、フツルの魅力にひかれて04年から10年にかけて現地で取材を重ねた。
今回のテーマは「タイムレス フツル」。民族衣装を身に着けた人たちの一点物のポラロイド写真を、古典的な写真印刷技術であるゴム印刷手法で転写したものだ。
作品数は26点(うち原画11点)と多くはないが、転写した紙は使えなくなった麻の古い民族衣装をすいた素材を活用する。その転写紙には、同じく民族衣装から外した刺繍や編地なども埋め込み、オリジナル性が際立つ作品に仕上げているのが特徴だ。
主催は、新進の写真家やキュレーターの発掘・支援を目指し、13年から公募型アートフェスティバルを開いているKG+。KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭と連携しながら、今年も京都市内各所で60以上の展覧会を開いている。かねてから会場提供などで関係のあるワコールスタディホールが協賛し、在日ウクライナ大使館が後援する形で実施。入場は無料で平日の午前10時~午後8時まで開館(5月3~5日は午前10時から午後5時30分まで)。
展示会のキュレーターを務めるKG+の上村優プロジェクトマネージャーは、パリ留学時からビラク氏と親交を持つ。現在、同氏はウクライナ難民の支援活動などにも取り組んでいるが、上村氏は「厳しい側面だけでなく、フツルの人たちの日々の丁寧な生活に触れ、同時にウクライナのことをより知ってもらいたい」とする。京都だけでなく、巡回展も実現したい意向だ。