「大人ニーズ離さない」百貨店婦人服次の手

2016/12/30 06:39 更新


新ブランド・新ショップで種まき


 百貨店を主販路とする婦人服の新ブランド・新ショップの開発が相次いでいる。百貨店での婦人服の販売は「リーマンショックを超える厳しさ」「経験したことのない苦戦」と言われる状況だが、「上質な物を求める顧客が確実にいる」ゾーンとしての期待も根強い。大人の女性のニーズに合わせた提案を強め、消費を刺激する。

ブランド2

 今秋から来春にかけて、複数の新ブランドがスタートする。大手・上場アパレルの「選択と集中」によるブランドの撤退が進む一方、新しい種まきが始まった。厳しい時期だからこそ、新しい動きに対する百貨店側の関心も高く、今秋、ファイブフォックスが開発した新ブランド「ルミノーゾ・コムサ」の展示会は、従来の約1・5倍の来場者数だったという。

棚什器は使わず、ラックごとに分かりやすく陳列する「ルミノーゾ・コムサ」
棚什器は使わず、ラックごとに分かりやすく陳列する「ルミノーゾ・コムサ」

 

危機感

 「今やっておくべき」と話すのは、ルックの多田和洋社長。17年春、10年ぶりのオリジナルブランド「フィラージュ」をスタートする。あえてこの時期を狙ったわけではないが、ブランド撤退が相次ぐなか、「この機会を逃すと、百貨店での婦人服の売り場がもっと縮小してしまうかもしれない」との危機感を持つ。フィラージュは、長年インポートブランドを運営してきた経験と物作りのノウハウを生かし、インポートブランドの上質感とトレンド感に、日本人女性の体形を美しく見せるフィッティングを組み合わせた服を作る。「次代を担うナショナルブランドとして育てていく」考えだ。

日本人女性を美しく見せるシルエットが特徴の「フィラージュ」
日本人女性を美しく見せるシルエットが特徴の「フィラージュ」

 

 

 レナウンは来春、30~40代の子育て世代に向けた新業態「エンスウィート・ルミエール」を立ち上げる。レディスの基幹ブランドの一つである「エンスウィート」の事業拡大策の一環。百貨店を主販路とするエンスウィートに対して、ルミエールは百貨店に限らずSC、駅ビルなどにも販路を広げ、幅広い層を取り込む。同社の中でGMS(総合小売業)向け「エレメントオブシンプルライフ」が堅調に推移していることもあり、多様な販路に対応できるブランドを強化する。

デザートのようにアクセサリーを並べてアイキャッチとする「「エンスウィート・ルミエール」」
デザートのようにアクセサリーを並べてアイキャッチとする「「エンスウィート・ルミエール」」
 

 

上質化

 既存ブランドでも、30~40代を中心とする大人の女性に向けた新しい提案が目立つ。キーワードは上質化。オンワード樫山の「自由区」は9月、高島屋横浜店に初のサロン型ショップ「自由区クラスラウンジ」を開設した。ブランドの上質化の一環で、自由区の商品に加えて、上質ラインの「クラスラウンジ」とフォーマルウェアに特化した新レーベル「ロブエ」を揃える。

店内中央には大きなソファが置かれ、ゆっくりと買い物を楽しむことができる「自由区クラスラウンジ」
店内中央には大きなソファが置かれ、ゆっくりと買い物を楽しむことができる「自由区クラスラウンジ」

 

 

 ワールドの「アンタイトル」も8月末、松屋銀座本店に初のコンセプトショップ「アンタイトル・サロン」をオープンした。「上質を日常で着る喜び」がコンセプト。アンタイトルに加え、今秋デビューしたエグゼクティブキャリア向けの新ライン「アンタイトル・エッセンシャルクルー」を揃える。店内にはサロンスペースも設置し、ゆっくり買い物を楽しめる環境を整えた。

今秋デビューの1ランク上の新ライン「アンタイトル・エッセンシャルクルー」
今秋デビューの1ランク上の新ライン「アンタイトル・エッセンシャルクルー」

(繊研 2016/11/02 日付 19583 号 1 面)



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