和装の有力企業はコロナ禍を乗り切り、新たな顧客作りに踏み出している。感染防止対策が続いた時期はゆかたなどは苦戦を強いられたが、感染対策をした上での催事販売や店頭販売で着実に売り上げを確保。同時に人材教育など社内の改革にも着手。アフターコロナを見据えた取り組みを強化してきた。生産段階の疲弊など業界の将来にとって深刻な課題も明らかになってきた中、和装の有力企業の戦略をまとめた。
やまと 物作りのストーリーへの「共感」増やす
やまとは「きものやまと」「キモノバイナデシコ」「ワイアンドサンズ」など5ブランドを展開。各ブランドが産地と商品を作り込み、積極的に発信してきた。「サイトやSNS経由のお客様が増え、物作りのストーリーに共感して購入した」(延山直子ブランドコミュニケーション部長)ことで客単価も上がり、23年3月期の売上高は前期比10%増となった。
ストーリーの提案は、矢嶋孝行社長の体制になった19年以降、特徴的な取り組みだ。「共創」の理念を掲げ、産地との取り組みを軸に、異分野との協業も活発化。特に産地に関しては、作り手の支援はもとより、社員の学びにも力を入れ、産地研修は昨年も50回を超えた。生産工程や商品知識に加え、作り手の思い、風土や歴史なども体感することで、接客やSNSなどの発信にストーリーが通う。