【VR×ファッションの先③】仮想世界はファッションに有用

2020/01/04 06:28 更新


【VR×ファッションの先③】≪チャンス≫仮想世界はファッションに有用

■日本の優位性

 バーチャルとファッションが融合した先の世界にいち早く目を付け、考え続けているデザイナーがいる。「Chloma」(クロマ)のデザイナー鈴木淳哉さんだ。「リアルとバーチャルを境なく歩く現代人のためのファッションブランド」というコンセプトを11年のブランド創設当初から掲げて服を作り続け、「バーチャル世界でのファッションこそ日本が世界にイニシアチブをとれる可能性がある」と話す。

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 クロマはフューチャリスティックな表現をパーカなどのスポーツやアウトドアウェアに落とし込んで販売している。客の中心は主に10~30代前後。最近では海外からの人気も高い。「元々、アニメやキャラクター文化も好きだった」鈴木さん。そうした文化からも着想を得て、現実と仮想のファッションを地続きで考えてきた。日本が得意とするアニメ的なデフォルメされた表現がバーチャル世界ではカギになってくるという。

 VR(仮想現実)空間でアバターを持つ人が広がるためには、スマ―トフォンなどのデバイスで簡単に扱えることが重要になる。

 海外は本物のようなリアルなアバターの開発が主流だが、そうなるとどうしてもデータ量が多くなり、手軽には扱いにくい。そこで日本のデフォルメ表現が強みになってくると見て、そのための準備をクロマを通して進めてきた。

現実と仮想とがシームレスなファッションを目指すクロマ

■専門性が強み

 バーチャル世界が広がることでファッション業界にもチャンスがある。基本的にアバターなど3Dモデルを作る人々はゲームやキャラクター業界のモデラーが中心で、ファッションに関する関心や知識が乏しい。現実と同じようにTPOに合わせたファッションが必要になった時、アパレルのデザインストックやパターンの専門性は強みになる。

 具体的に見ると、パタンナーなどはCAD(コンピューターによる設計)を使った3Dモデルでの設計が一般的。この技術はアバターの服の3Dモデリングをする技術と近く、「VR空間上で服を作る3Dモデラーの予備軍がアパレル業界には多数いることになるし、その需要は高い」という。服のデザインデータの販売なども今後需要が生まれる可能性もある。

 ブランドとしても、VR空間でも服を売ることで、現実と仮想世界の両方でブランドの世界を体験してもらう時間が増える利点がある。ブランドのファンをより獲得する販促ツールとしての側面でも今後、バーチャルを活用する利点は大きい。ファッション業界側からもバーチャルな世界への理解を深めることが大切だ。

(繊研新聞本紙19年10月25日付)



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