【VR×ファッションの先②】バーチャル時代のクリエイター

2020/01/03 06:29 更新


【VR×ファッションの先②】≪アバター≫バーチャル時代のクリエイター

 バーチャル技術が、クリエイターの活動の場を広げている。アバターをコミュニケーションツールと捉え、仮想空間だけでなく現実世界に向けて伝達の円滑化に使う。

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■心の壁溶かす

 東京・原宿の専門店「パーク」(ヒューマンフォーラム運営)が9月14日、1日限定で無人店舗となった。バーチャル販売員のイトッポイドさん主催の「バーチャルリアルT」は、クリエイターがデザインしたTシャツを、自身がアバター姿で接客して売る企画だ。5月に初めて開催、クリエイターからの出品希望が相次いで2度目となった。

バーチャル販売員のイトッポイドさん

 入り口正面にスクリーンとマイク、カメラを置き、壁際にTシャツを陳列。スクリーンの脇に代金を入れる箱を設置した。舞台衣装デザイナーやグラフィックデザイナーなど8人が、1時間交代で1人ずつ、別の建物からアバターを操作し、店内のスクリーンに映って接客した。

 イトッポイドさんは「アバターを使うことで、引っ込み思案であまり表に出てこないクリエイターでも、抵抗なく接客できる」と話す。このためにアバターを初めて得たクリエイターも、客と自然に会話していた。

 アバターは、客側にも「可愛らしいデザイン」と「物理的に距離を縮められない」ことで安心感を与えた。自由な姿になれ、「かつその見せ方・使い方を自由にコントロールできる」特性が、「商品やコンテンツの価値をより効果的にお客に伝える手段」という。接客を通じて目当ての商品以外の購入も多かった。

 接客は店頭購入を避ける要因の一つともされる。コト消費重視の潮流のなか、抵抗感の少ない形でクリエイターと会える購買体験となれば効果大だ。

互いに接客への抵抗感が薄れる

■利点は同じ

 実店舗でのバーチャル企画、ウィゴーの「ベイダーベイダー」とバーチャルリアルTは、商品にTシャツを選んだ。

 その利点を、イトッポイドさんは「バーチャルとリアルで同じように、買いやすくかつ着こなせる」という。バーチャルリアルTでは当日、一部の販売員がアバター姿で商品を着た。会期前には、宣伝で商品と同じデザインのアバター用データを配布した。

 シンプルな形で価格を抑え、性別を問わず着られるTシャツは、これまでも多くのクリエイターとの協業商品として使われてきた。大きく柄を見せやすく、ビジュアル表現と相性が良いこともあるだろう。これらの要素は、バーチャルでも同じ。誰もが着やすい服にメッセージ性を込め、クリエイターはより広く訴求できる。

 アバター所有者が限られていると、まずアバターという体を持つことが一つのステイタスであり表現の関心事だった。体の所有者が増えた現在、より個性を出すための表現として、服への関心は着実に高まっている。

(繊研新聞本紙19年10月24日付)



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