節約のために買いたい本を我慢して、図書館に行く回数が増えた。すると、今まで目に留まらなかった本に出合う。その日は偶然、花森安治の選集を手にした。
戦後、彼は『スタイルブック』を創刊した。それは洋裁学校にも通えず、新しい服が買えない女性たちに、ファッションの楽しみを提供するものだったという。
中身は、直線裁ちの服を、ひもやベルトで着こなしたファッション雑誌で、手持ちのきものをほどき、和裁の技術さえあれば誰でも作れるものばかり。デザイン画の番号を送れば、型紙ももらえたという。新しい生地がなくてもファッションを楽しめると、大きな反響があった。
豊かになった現代も、国民の財布事情は厳しく、本紙元日付の調査でも価格にシビアな若者の状況が分かる。それでもファッションの楽しみを絶やさないための方法はあり、それはやがて文化になると改めて考える。リユースも一例だろう。本を我慢した結果、花森の励ましの言葉に出合えた。苦境を逆手に取る心意気を大事にしたい。
(桃)