東京・上野、アメヤ横丁といえば、アメカジ好きの聖地だが、ここ数年は日本人よりもインバウンド客の方が目立つ。彼らのお目当ては国産ジーンズ。取材で店頭を見ていると、旧式の織機やミシンを駆使して作られた2万~4万円の商品が目の前で飛ぶように売れていく。
あるベテラン店長は「もう異常な売れ方です」と話す。ジーンズが主力の店のほとんどが毎月、前年実績を大きく上回る結果を出しているが、好調ゆえの問題も出てきたという。「インバウンドはあまり接客しなくても買ってくれる。若手スタッフが経験不足にならないか少し心配だ」と話す。
慢性的な商品不足も課題だ。どのブランドの定番アイテムも、入荷後すぐにサイズ欠けが起きる状況が続いている。産地の人員不足や高齢化によって、今後さらに厳しくなることが予想される。
「良い時こそ、良くない状況を予測して身構えなくては」。数十年、アメ横を見つめ続けてきた店長は、にぎわう通りを眺めて、そうつぶやいた。
(夏)