《視点》最賃の季節

2024/08/22 06:23 更新


 6月の実質賃金がようやくプラスに転じた。要因は賞与の伸びというから今後も継続するかは見通せず、消費の活性化につながるかどうかわからない。客数を増やしにくくなっている流通業にとって購買力の引き上げが待ち望まれる。

 中央最低賃金審議会が過去最高の50円を引き上げ、全国平均1054円の目安を示した24年度の最低賃金は、各都道府県の地方最低賃金審議会による上積みの答申が相次いでおり、近く各地の最賃が出揃う。

 地方審議会による積み増しは、労働人口の減少が顕在化する中での自治体間の競争の様相となっており、地域別で示す中央審議会の目安の瑕疵(かし)と思うが、購買力を高めるものとして引き上げることは歓迎だ。

 もちろん中小企業にとって負担が増すとされており、労務費を含めた価格転嫁の促進は欠かせない。デフレを招いた低賃金労働に依拠した収益ではなく、インフレと賃上げの好循環の希求は維持すべきだろう。30年代半ばまでに最低賃金1500円と言った岸田首相は退陣するが、着実にあるいは前倒しで進めたい。

(光)



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