《視点》良かれと思って

2024/05/16 06:23 更新


 欧州企業を筆頭に、環境や人権に配慮した調達目標を表明している。事業を通じて社会的責任を果たそうとする活動も市場や社会から評価される時代だ。一方で気がかりなこともある。

 企業が良かれと思って掲げた目標が、環境や人権問題の遠因になっているケースはないだろうか。例えば〝サステイナブルコットン〟とされるオーガニックコットンやBCIコットンの需要の高まりが、サプライヤーに対するプレッシャーになっていないか。

 顧客(ブランドや小売業)の目標とのギャップを埋めようとしたことが、サプライチェーンの先の先にある農業の世界で、環境破壊につながる農地開拓や強制労働、認証偽装などの問題を引き起こす可能性はゼロと言い切れない。

 欧米のブランドや小売業は自分たちが使うオーガニックコットンの農家に足を運ぶそうだ。繊維素材の上流の生産者とも定期的に交流している。それだけで問題を未然に防げるとは思わないが、現場を全く知らないよりは問題への対処がスムーズにできるはず。「基準をクリアしている」「認証を取得している」ことが環境・人権に配慮するための十分条件ではない。

(嗣)



この記事に関連する記事