入社から20回もの異動を重ね、近年はもっぱら業績の悪化した子会社の代表を務め、各社の経営の立て直しを主導してきた商社マンがいる。その彼に、新たな組織に入ったときの心得を聞いてみた。返ってきたのは、「先入観を持たずに現場の生の声をまずよく聞くこと」という意外な答え。
「心を開いて話を聞き、会話を重ねる。そうすることで相手の懐に入り込んでいく。時間はかかるが、インプットの量を多くしないと、アウトプットの精度が低くなる」との説明に納得した。
会社や組織の改革を期待されて外部から送り込まれた人は、とにかく早く結果を出したがり、コトを急ぐきらいがあると思う。しかし、なぜ今の事態に至っているのか、現場の状況をリアルに把握せずに一方的に変更を求めても、社員の心は離れ、チームワークも削がれてしまうだろう。当然、改革プランの精度が悪ければ、仕切り直すこともある。
先の商社マンは、自身を「スロースターター」と言うが、実は一番の近道を歩んでいると思った。
(潤)