「本当は壁を抜いて区画を広げたかったのですが」とは、マンション複合施設の改装担当者。上に住居が乗っているから柱が太いのはもちろん、耐震上、壁も維持しなければならず、なかなか思い通りにならなかった。改装工事も夜間に行うことができず、休業する期間が長くなってしまったという。
エリアの再開発、スクラップ・アンド・ビルドでマンションなどの下層に商業施設の入る事例が増えている。利便性やにぎわいの創出のために住居に加えて商業が求められることが少なくなく、オーバーストアのもとで不動産を効率的に活用しようとすれば複合化は当然の選択ではある。商業施設の側から見ても上に多くの居住者がいれば客数の基礎数を押し上げるから利点は小さくない。
とはいえ、帰宅したら音がして落ち着かないのは嫌だ、営業時間外に工事をして早く店を開きたい――住む場と売る場が優先したいことはそれぞれ異なる。改装といった一過性の話だけでなく、日々の商品搬入も安心感と効率がせめぎ合う。
このあとも複合型の開発が続きそうだが、商業専用の建物の方が使いやすいのは間違いない。
(光)