《視点》上場企業の堅苦しさ

2021/04/01 06:23 更新


 新型コロナが急速な広がりをみせていたある日、業界の東証1部上場企業のある役員が「ウチは動くのが遅い。そう思わないか」と問い掛けた。そのころから、ファッション企業のなかで好不調の差が激しくなっていた。

 「当社は何を決めるにも判断が遅い。新しいことをするにも『稟議(りんぎ)を通して、制度を作り、研修をしてからでないとできない』となる。内部統制ありきの上場企業の堅苦しさだ」とぼやいた。

 その点、制度、稟議に過剰に縛られないフットワークが軽い企業は「やってみて、駄目だったら、また違うことをやればいい」とアグレッシブにトライ&エラーを繰り返して、結果的に最善の道を見いだしている。

 これまでの経験値では打開できない経営環境や、不測の事態が多発する中で、リスクの範疇(はんちゅう)を設定しながらも「決まってないけど、やってもいいよ」と大胆に、新しいアイデアをスピーディーに後押しする度量が企業に試されているのではないか。

 これまでビジネスにおいて、失敗が許されない〝0敗〟を良しとしてきた。しかし、今の時代は試合数をこなして〝4勝3敗〟で勝ち越しながら、次の芽を見いだすことが大事だ。

(民)



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