《めてみみ》人の時間、星の時間

2026/01/01 06:23 更新NEW!


 東京の空にも星の瞬く季節になった。暑い暑いと繰り返した夏がいつの間にか去り、乾いた寒気がやって来て街の空気をすすいでいる。冬の形の街路樹の中を歩くのも、なかなかいいものだ。

 冬の星座と言えば、オリオン座。狩人オリオンのベルトの三つの星が見つけやすい。その上の右肩に位置するのが、赤く輝くベテルギウスだ。冬の大三角を成す一等星でもあるが、間もなく寿命が尽きるとされる。と言っても、消滅してしまうのは、早くて1万年から10万年は先の話。恒星の摂理から見れば、地上の1万年など瞬時ということらしい。

 本紙は、今年の編集テーマを「ファッションビジネスの未来図」とした。何が起こっても不思議でない時代に突入し、長期的な経営計画を立てるのが難しい事業環境にある。それは承知しているが、繊維・ファッションビジネスに携わる人々に未来を問い、語り合い、今日とつながる世界の輪郭を描いていきたい。

 「1年先も分からないのに」と苦笑するのは、経営者に限らない。自然災害をはじめ、予測不能な出来事が身近な場面にも降りかかり得る。そうした懸念が、多くの人の心に滞る時代でもある。

 だからこそ、明るく前を向きたい。見えずとも、信じていい世界はある。125年前の正岡子規の歌を贈ろう。「真砂なす数なき星の其の中に吾に向ひて光る星あり」



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