大手企業がプロパー消化率向上に本腰を入れ始めている。「プロパー消化率は無意味」という専門家やコンサルタントもいるが、果たしてそうか。プロパー強化は、不良在庫を減らして収益を改善するという効果だけではない。アパレル企業にとって競争力の原点とも言える重要さがあると考える。
売れる商品はブランド力や販売手法が消費行動に適合しているか、デザインや機能が嗜好(しこう)に合っているか。価値が価格に見合うか、それ以上の価値を持っているか。こうした要素が支持されている。当たり前のことだが、実際には価格訴求に走り、安易な海外生産で同質化を招き、価値を下げてきた企業が多い。最初から売れ残りを想定し、プロパー価格に上乗せする。これでは売れないのも当然で、サステイナビリティー(持続可能性)に敏感になっている消費者の共感も得られない。
むしろ、消費者の選択基準そのものが激変している。トレンドや価格よりも、共感を作るような作り方や販売方法が購買行動の決定要因に上がっている。こうした現実に向き合い、正面から取り組むことがブランドや企業の競争力の源泉になる。その証明がプロパーで売れるという現象につながり、産業の再生にも結びついていく。
(矢)