《視点》わけ合えばあまる

2020/05/11 06:23 更新


 「うばい合えば足らぬ。わけ合えばあまる」。91年に亡くなった詩人、相田みつをさんの言葉だ。東日本大震災で買い占め騒動が起きた時、この言葉は多くの人の共感を呼んだ。

 新型コロナウイルス感染拡大で、マスク、ティッシュ、トイレットペーパーなど生活用品の買い占めが起きた。ネットで転売する人も出て、社会問題化した。政府がマスク2枚を全戸配布すると発表すると「たかが2枚配布してどうなる」と批判が相次いだ。だが、そもそも各自が必要な量だけを購入していれば、マスク配布も必要がなかったかもしれない。

 先日あるアパレルの内見会で凝ったVPを見た。出張自粛でバイヤーが来ないのは分かっていたが、「ディスプレー企業もイベント自粛で仕事が減っている」と、いつもに近い造作をお願いしたという。

 そのアパレルは、先物商談がほぼストップし、今期の業績見通しは決して明るくない。有事の時だからこその素晴らしい精神だと思った。

 この1年、企業活動は川上から川下まで全てが楽ではない。だからこそ、「わけ合えばあまる」の精神を少しでも思い出して乗り切りたい。

(森)



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