《視点》目的と手段

2018/05/08 04:00 更新


 ここ半年のうちにメディアが服屋を始めるという取材を2度経験した。一つは枻(えい)出版社のメンズ誌『クラッチマガジン』が英国に開店した「クラッチカフェ」。もう一つはファッションウェブメディアの「ディードファッション」が東京に開店した「R for D」だ。

 ファッションを発信するという目的は変わらないが、発信の場は既存媒体に縛られる必要はないとの考えからだ。紙面やウェブの枠を超えてリアルでも発信する場を設けた。

 目的を軸に手段を多様化するという話は、ライザップグループの瀬戸健社長も。同社は消費者の〝自身の価値を高めたい〟という欲求を満たすための手段として様々な企業を買収し、サービスの幅を広げている。

 目的という軸はぶれさせず、柔軟に手段の数を増やして事業の幅を広げる企業の話を聞いていると、昨今苦戦するアパレル企業は「自社が販売する服を通じて、顧客にどのような価値を提供したいのか」というビジョンがあまり見えてこない。「服を売る」ことが目的になっていては厳しいのではないだろうか。(友)



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