「国際競争で日本が勝つモノづくりの手段として、〝日本人ならではの職人芸〟や〝匠(たくみ)の技術〟が盛んに叫ばれる。しかしそれは〝工業生産〟が前提だ。極論に行き過ぎてしまうと、全てが〝伝統工芸〟になってしまう。これでは産業としての繊維が成り立たない」
こう危惧するのはある中小規模の紡績企業経営者。この経営者は「イタリアの繊維産業を何度か視察したが、中小規模でも設備更新と自動化が進んでいる。糸染めや撚糸といった工程にも、新しい機械が入っている」と話す。
続けて「確かに匠の技も必要だが、人に依存しすぎては産業の継続の上でリスクが大きい。日本はもっと技術革新や新設備の導入を進めるべきだ」と訴える。
設備更新が減ると、新しい機械の開発や販売が少なくなり、技術革新の情報に触れることが減る。さきほどの経営者は「日本国内で新しい機械の情報が極端に少なくなっている。設備の革新を考えようにも、情報がないので発想できなくなる」ともいう。
IT(情報技術)や自動化がキーワードになっている今、製造設備や機械にも関心を向けるべきだろう。(浅)