安易な精神論を振りかざすつもりは毛頭ないが、結局売れるのは「死ぬ気で作っているブランド」なんだと最近つくづく思う。逆に言えば、「これ、死ぬ気で作っているのかな」と思ってしまうような商品はいまだに多い。〝死ぬ気〟という表現が適切ではないことくらい分かっている。でも、それほどに誠実に向き合わないと、人の心を動かし、ものを買わせることなんて、今の時代ではもう不可能だ。
アパレル業界歴30年以上というあるメーカーの社長と話していた時、「あの頃は、どんな服でも作れば作るだけ売れたんですよ」という言葉が出てきた。バブル期や90年代を振り返っての感想だ。06年からこの業界で働き出した記者には知る由もないが、確かにそういう時代はあったのだろう。
業界はその頃の感覚のままで、のらりくらりときてしまった。しかし、ここにきて矛盾が噴出し、いよいよ立ち行かなくなっている。それなのに、いまだに展示会に行くと、安易なコピーや戦略なき前年踏襲を見てウンザリすることがある。
死ぬ気で作ることなんて大前提で、その上で更に、最新テクノロジーなどを取り入れていかないと勝てない時代だ。でも、その大前提すらままならないブランドや企業が少なからずあることに、憤りを感じる。(五)