出会い、つながりを意味する「エンゲージメント」について、アパレル業界が危機感を募らせている。
商品が市場にあふれる中で、消費者は買い物欲求をなるべく抑え、必要なものを自身に自問自答している。「良いものが適正価格で販売されて当たり前」「理由が見つからなければ買わない」と、買い物での選別がさらに厳しくなることも予想されている。
あるブランドのECについての取材で、「1回購入してもらうための施策は」と聞いたところ、「コミュニケーションの質」と返ってきた。ヘビーに使ってくれるユーザー、一方でライトな感覚で選んでいる、あるいはたまたま価格で選んだユーザーなど、客はさまざまな階層に分かれる。ユーザーのブランドへの思いや熱量ごとに、どういったコミュニケーションを取っていくか、さらにユーザーの生活嗜好(しこう)を読んで、先回りした提案に挑むことが「質」の意味だととらえた。
危険なのが、価格が決め手になること。「その後も価格が基準となり、ブランドや商品価値がその点だけに絞られてしまう」。購買の決め手を「提案への信頼」にするためには、ユーザーの嗜好が分かる情報とデータを収集・解析して、企画精度を高めることに挑み続けることが最重要になっている。(疋)