【パリ=松井孝予通信員】トランプ米大統領は4月9日、導入したばかりの相互関税の一部を90日間停止すると発表した。同日、EU(欧州連合)は、米国の鉄鋼・アルミニウム関税への対抗策として、報復関税案の第1弾を正式承認した。米国からの輸入品約200億ユーロ相当に段階的に課す構えで、「報復措置を取った国」は90日間の停止の対象外となるため、EUは現時点で例外となる可能性がある。
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5月16日から発動予定の第二段階では、衣料・家庭用繊維製品などファッション分野が追加課税の対象。関税率は10~25%とされ、米からのアパレル・テキスタイル製品の欧州向け輸出には打撃となる。一方で、相互関税がEUにも適用され続ければ、米向けの高級衣料品などにも影響が及ぶ可能性があり、ファッション産業は価格や供給面への波及を懸念している。
こうした中、EUは中国との対話を深めている。9日にはフォン・デア・ライエン欧州委員長が中国の李強首相と協議し、過剰輸出の抑制と市場の安定について意見を交わした。中国側は「欧州市場を混乱させない」と応じ、EUはアジア製品流入の監視を強化する輸入監視タスクフォースの設置を表明。相互関税をめぐる米政権の紆余曲折(うよきょくせつ)により、欧州のファッション産業は、先の見通しづらい通商環境の中で冷静な対応を迫られている。