1916年9月13日は、英国の小説家、ロアルド・ダールの生まれた日です。「奇妙な味の小説」を書かせたなら天下一品です。読むと、その直後、脳みそが空中分解すること間違いなしです。そうかといえば、童話も書き、映画の脚本も書いています。イアン・フレミング原作の『007は二度死ぬ』の脚本にも参加しています。
短編のひとつに『古本屋』があります。それはロンドンのチャリング・クロス・ロードの「ウイリアム・バゲージ」という古書店が舞台。「店のなかにはたいていいつも、コートにトリルビー帽といった恰好の、寡黙で陰気な客が二、三人いて…」。
トリルビーはソフト帽の別名です。ジョージ・デュ・モーリエが1894年に発表した『トリルビー』にちなんでの名前。これが演劇となって大好評。女主人公のトリルビーが男物のソフト帽をかぶったので、話題になったものです。同じものをフランスでは「フェドーラ」と呼ぶことが多い。(服飾評論家・出石尚三)