繊研新聞社は、繊維事業を手掛ける商社に対して、「若手・中堅社員育成に関するアンケート調査」を実施し、その中から来年4月入社予定の新卒採用者数をまとめた。多くの企業が今春よりも採用人数を増やしている。
全社員数は前年度比で減っている企業が多い。この間、コロナ禍で採用が停滞気味だったが、採用数を増やすことで、労働過密の低減や事業の維持、拡大を目指す。一方で「就職先として繊維業界を志望する人が減っている」、自社を志望する「母集団形成がますます難しくなっている」と採用したくても想定する人数を確保できないケースもあり、深刻さが増している。
新卒採用に関して、「男性応募学生が減っている」「新入社員の応募で圧倒的に女性が多く、採用の男女比に偏りがある」と男性が採りにくくなっているとの指摘もある。
また、OEM(相手先ブランドによる生産)主体のため、「自社製品がなく、同業他社との差別化が難しい」と自社の特徴、強みをどう伝えるかも悩みの一つだ。
新入社員を採用しても、「若手・中堅の離職率が高まっている」と人材流出も大きな問題だ。採用し、育成しても流出が多ければ企業の成長につながりにくい。「業績が右肩上がりに回復し、離職率の高まりも少し落ち着いた」と胸をなでおろす経営幹部もいる。有望な人材が入り、「この会社、この業界で働き続けたい」という魅力にあふれた企業・業界になることが必要だ。
伊藤忠商事は、「若手・中堅社員は、成長実感やキャリア形成への関心が高い」と商品分野を超えた部署に異動できるチャレンジ・キャリア制度などの制度面や選択型の研修機会の拡充など、各社員の自律的なキャリア形成を支援する環境整備に力を注ぐ。別の商社は、「これまでの漠然とした育成計画から、比較的短期でのキャリアプランを示す必要がある」と指摘。社員の育成・制度面ではキャリアアップ、成長が実感できる育成メニューが重要になっている。