東京ブランドの24年春夏は、マスキュリンな要素を発展させる造形やアイテムの変化が目を引いた。ディテールをそぎ落として線の美しさを見せるバランスに、ブランドそれぞれのらしさが反映されている。心地よい緊張感と、型にはまらず、自由に生きる女性像を感じさせた。
(須田渉美)
テーラードアイテムやドレスのフォルムに、現代的な構築性が加わった。「アキラナカ」(ナカアキラ)は、仏アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーの思想を着想源にリゾートコレクションを提案した。作品から読み取った「アイデンティティーの変容、喪失」を洋服の形や意匠性に落とし込んだ。テーラードジャケットは、輪郭やパネルラインを残し、前開きの作りを溶かすようにして造形的な美しさを強調し、センターベントのようなスリットを入れて軽やかに見せた。ジャケットとは言えない形だが、女性らしさやテーラーリングの価値を体感できる本質が残っていて、着飾る楽しさを感じさせる。トレンチコートから派生したノースリーブシャツやドレスも、軍服本来の姿から離れて服としての可能性を広げる。深いVネックで襟をセーラーカラーのように延長し、肩を覆う。ガンフラップなどのディテールを生かし、コントラストでフェミニンな魅力を際立たせた。