グランパレでは「ヴェラスケス」、リュクサンブールでは「チューダー王朝」、ルーヴル美術館では「プーサン」、オルセー美術館では「ボナール」。パリは過去にない例のない、アートな春の祭典を迎えている。世界から集まった傑作を1枚1枚鑑賞していたら、また桜の季節を迎えしまうだろう。それくらい凄い。
そして、まさか、とつい言葉が漏れてしまうほど、アートに興味を持つ者の夢を実現した展覧会がフォンダシオンルイ・ヴィトン(FLV)で開かれている。
Edvard Munch
The Scream, 1893 ? 1910 ?
Tempera et huile sur carton non apprêté
83,5 x 66 cm
Munch Museum, Oslo
MM M 514 (Woll M 896)
Photo © Munch Museum
■ ” Keys to a passion “ _ 芸術を旅する
FLV開館を記念する第3ステージの展覧会がこの ” Keys to a passion “。
ベーコン、ムンク、マティス、ロスコ、レジェ、モンドリアン、ジャコメッティ… ここにはポンピドゥーセンター、オリセー美術館、ピカソ美術館など国内だけでなく、ニューヨークの近代美術館やグッゲンハイム、ロンドンのナショナルギャラリーやテート・モダン、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館など世界から、芸術のコードを変え、モダニティの基礎となった20世紀前半の絵が並ぶ。
まさに、これまでにない見る芸術史だ。LVMHの会長兼CEOで同フォンダシオン会長のベルナール・アルノー氏が、オープンプログラムで最も力を注いだ展覧会だという。
Henri Matisse
La Danse, 1909-1910
Saint-Pétersbourg, musée de l’Ermitage.
© Succession H. Matisse. Photo : © The State Hermitage Museum, Saint Petersburg, 2015/ Vladimir Terebenin, 2014
■ムンク作『叫び』がFLVに
” Keys to a passion ” は4つのシークエンスで繋がり、それぞれシークエンスで重要な意味を持ち、そのアイコンでもある厳選された作品が展示されている。
シークエンスは ” Subjective expressionism ” から始まる。
ここにはベーコン、ジャコメッテ、そして門外不出の名画、ムンクの『叫び』が並ぶ。
” Contemplative ” では、モネやモンドリアン、ロスコ、ボナール、ピカソの作品、” Popist ” ではピカビアやレジェの大作、そして ” Music ” ではマティスの初期と晩年のそれぞれの代表作、『ダンス』と『王の悲しみ』が初めて一緒に展示されている。
Mark Rothko
No. 46 [Black, Ochre, Red Over Red], 1957
Huile sur toile
99 1/2 x 81 1/2 x 1 3/4 in. (252.73 x 207.01 x 4.45 cm)
The Museum ofContemporary Art, Los Angeles The Panza Collection
© 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko – ADAGP, Paris, 2015 – Photo The Museum of Contemporary Art, Los Angeles
Fernand Léger
Three Women (Le Grand Déjeuner), 1921
Huile sur toile
6′ 1/4′ x 8’ 3′ (183.5 x 251.5 cm).
New York, Museum of Modern Art (MoMA), Mrs. Simon Guggenheim Fund. 189.1942
© Adagp, Paris 2015 – Photo © 2015 Digital Image, the Museum of modern Art, New York/Scala, Florence
初めて『叫び』を見た時、無意識に描かれている通りに両手で耳を塞いでしまった。本物の絵との「会話」をした。
こうした体験は大切であり必要なのだ、と感じる。知覚的に美術の歴史を辿りながら、誰が現代の美術史をつくるのか、何が作品をアイコニックにするのかと問いかけてくるエキシビジョン。 ” Keys to a passion ” は歴史に残る展示会となるだろう。
【インフォメーション】” Keys to a passion “ 7月6日まで
キュレーター/スザンヌ・パジェ、ベアトリス・パラン
【エスパス ルイ・ヴィトン】ルイ・ヴィトンのシャンゼリゼ店に併設のエスパス ルイ・ヴィトンでは、ミュンヘン、東京のエスパスLVとの初の共同企画「ル・フィル・ルージュ」展が開催され、塩田千春の圧倒的なインスタレーション ” Infinity ” が展示された(東京は5月末まで)。重要なアート施設に位置づけられているエスパスLVのプログラムのチェックもお忘れなく。
FLVの1階 レストラン ル・フランク
天で泳ぐフランク・ゲーリーの魚たちを眺めながら、シェフ、ジャン=ルイ・ノミコスのお料理を!
CHIHARU SHIOTA
Infinity
2015
©JASPAR, Tokyo, 2015
Photo: Sun-Hi Mang
Work with the support of Espace Louis Vuitton Paris
CHIHARU SHIOTA Infinity
2015 ©JASPAR, Tokyo, 2015
Photo: Sun-Hi Mang
Work with the support of Espace Louis Vuitton Paris
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。