テキスタイルトレンド16~17年秋冬

2015/07/09 06:17 更新


伊藤忠ファッションシステムのクリエイティブディレクター 池西美知子さんに聞きました

創造性の調和を 組織の表現も重要に

 伊藤忠ファッションシステムのクリエイティブディレクターで、プルミエール・ヴィジョン(PV)のトレンド委員を務める池西美知子さんは、16~17年秋冬のテキスタイルトレンドのキーワードに〝サイエンスクリエーション〟を挙げる。「テクノロジーの力で情緒的な美しさが引き出せるのでは」という提案だ。池西さんに、来秋冬のテキスタイルトレンドを聞いた。

個々の魅力を併存

 池西さんがテキスタイルトレンドを語る中で、頻繁に口にしたのが、「調和」「融合」「対話」。サイエンスクリエーションも「テクノロジーと創造性を調和させること」が根底にある。

 テクノロジーは、スポーツウエアを代表に日本がリードしている分野だが、機能素材とファッション衣料素材が隔絶されてしまっていることが少なくない。実際、昨年9月のPVパリで行われたPVアワードは、イタリアの企業が独占した。受賞した企業は、テクノロジーをハンドリングできる形でゆっくり取り入れ、情緒をうまく表現できていたという。「エモーショナルに物を作るのも、テクノロジーでパフォーマンスの高さを追求するのも当たり前。創造性と技術を対話させ、調和していくことが重要」と指摘する。

 対極の要素を混ぜて意外性を出すという手法は、過去にもあったが、今シーズンは、互いの魅力を打ち消さずに〝併存〟させ、新しい調和を生み出すという点で異なる。天然繊維とテクノロジーを融合した「コンテンポラリーなナチュラルファブリック」がその一つだ。

目視できる組織

 無地の差別化に「組織をいかに面白く作っていくかが大事になりつつある」という。陰影のある表情や豊かな触感が楽しめるよう、「組織で魅力を引き出せれば、無地でもファンシーになりえる」。カギは「目視できる組織」だ。例えば、同じ綾組織でも、ギャバジンより、畝(うね)の立ったカルゼが良い。ドビーやジャカードも、具象的な柄より、メッシュ調や編み地風といった組織柄の表現で活躍しそうだ。

 トレンドに浮上して久しいダンボールニット、ボンディング、ダブルラッセル(3Dメッシュ)などの多層構造は、市場に定着してきた。3Dメッシュは、ハイエンドブランドのウエアやバッグへの採用が増えている。合繊らしい風合いが多かったが、今後は天然繊維混や天然繊維調の合繊などナチュラルな質感をもったものに進化し、浸透していくと予想する。織物や編物の組織を拡大したようなテクスチャーが無地の差別化のカギに

 カラーは、落ち着いた「調和の色」が主役。16年春夏に続き、配色が重要だが、秋冬は赤みを帯びた紫とグレーなど色相の組み合わせに移行する。寒色は温かく、暖色は洗練された都会的なムードを持たせるなど、両者を絶妙に調和させるのも特徴だ。赤、ブラウンが 多彩に揃い、トーン・オン・トーンでも立体感を出すシーズンという。



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