《サステイナビリティー FBとCSR》三陽商会の「服育」――多感な時期に触れる機会増やす
三陽商会は、服を大切に着る心を育てる「服育」活動に力を入れている。CSR(企業の社会的責任)の一環で、学校と一緒に取り組む。小学生から大学生まで「多感な時期にもっとファッションに触れ、アパレル業界について知って欲しい」との思いを形にしている。
同社は11年からCSR活動を積極化し、東日本大震災の被災地の復興支援を軸に様々な活動を行っている。「アパレル製造業らしい活動にも力を入れたい」と、物作りの延長線上にある取り組みとして、13年に学生を対象とする工場見学プログラムの提供を開始。14年には小学校で同社の社員が生徒に服作りなどを教える「服育」をスタートした。
社員の勉強にも
その理由について事業本部マーケティング戦略室コミュニケーション戦略チームCSR担当の西野祐子さんは「アパレルが人気のない職種になってきている。その背景には業界のことがあまり知られていないこともあるのではないかと思い、もっと知ってもらう努力をするべきだと考えた」と話す。
小学校での「服育」は、家庭科の授業の一環として行う。同社のデザイナーやパタンナーが〝先生〟となり服作りの過程を説明。その後、同社が用意する残反を使い、実際にバッグを作る。約2時間の「服育」授業で行うのは各自のテーマ決めとテーマに合わせた生地選びまでで、あとは約3カ月かけて学校で完成させるという流れだ。
9月、都内の成増小学校で高学年向けに行われた「服育」には、マッキントッシュ事業部の山崎祥隆さんと事業本部生産戦略事業部の岩田良昭さんがデザイナー、パタンナーとして参加。二人とも約2カ月前から授業の準備を進めてきた。
「いつもやっていることでも、子供たちのリアクションがあるとうれしいし、やりがいにつながる」(岩田さん)というように、教壇に立つことで「デザイナーやパタンナーにとっても様々な気付きがあり、勉強になる」(西野さん)。
大学生向けも
今年は初めて大学生に向けた「服育」にも取り組んだ。コートブランド「サンヨー」で明治大学商学部の西剛広ゼミの学生5人と共同で「大学生が着たい憧れチェスターコート」を開発。学生が企画して実際に工場まで行って生産現場を視察し、サンプルチェックも担当。販売プロモーションまで手掛けた。
プロジェクトに参加した商学部3年の阿出川唯さんは「作ってから広めるまでの過程が大変だったが、サンプルが形になった瞬間は感動した。どの工程にどれくらいコストがかかるのかも分かり、いい物にはそれなりの理由があると勉強になった」と振り返る。
10月末に販売を開始し、11月1、2日には明治大学の学園祭「明大祭」で試着撮影会を実施。1日には150人以上が来場した。同プロジェクトを担当した事業本部ビジネス開発事業部サンヨーコート・エッセンシャルディヴィジョンサンヨーコート企画グループ主任の石田和孝さんは「学生とのタッチポイントを作り、サンヨーを知ってもらう機会になればと考えていたが、予想以上の反応があった」と話す。