店長になった理由、店長を続ける理由は?㊦

2020/01/03 06:28 更新


【店長に役立つページ】《店長になった理由、店長を続ける理由は?》

 働き方が多様化し、販売員としてキャリアをスタートすると、店長を志さずとも様々な道が広がるようになった。多忙なイメージや責任の大きいイメージに気後れし、店長になりたくないという人もいる。店長として前向きに働く4人に、店長だからこそ感じられることや働くうえでどんなことを心掛けているかを聞いた。

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「アースミュージック&エコロジースーパープレミアムストア」ラゾーナ川崎プラザ店 山下咲さん

知らない仕事の楽しさに出会える

「くじけそうになった時もあったが、そこからまだ自分には出来ることがあると学びにつながった」と山下さん

 店長になってから「それまで気が付かなかった仕事のやりがいや、楽しさを感じるようになった」と話す山下さん。上司に店長にならないかと声をかけられた時は、うれしい半面驚きが大きかったという。

 店長になる前は、人の上に立つよりも上司を助けたいという気持ちが強く、周りへの気配りや自分がやれることは最大限やろうと心掛けていた。上司から「店長にならない?」と声がかかった時はとても悩んだが、後押しもあって決意した。

 当初は自分のことで精いっぱいだったが、やるからには頑張ろうと決めて務めた。他のスタッフと比べて劣等感や向いていないかもしれないと思う気持ちもあったが、一年を終えた時には「仕事が楽しい」と感じていた。「考えて、発信して、周りのスタッフと一緒に頑張ることがこんなに楽しいことなんだと気づけた」と話す。

 最近ではポイントカード会員を獲得するためにどんなことをしたら良いか考え、スタッフと取り組みを強化した。レジにお客が並んだら、すぐに声を掛けることを全員で徹底した結果、社内で獲得数1位を取ることが出来た。

 一番のやりがいは、「一緒に働いたから目標が出来た」「仕事が好きになった」とスタッフが言ってくれることだ。店長になってから周りのスタッフにも目がいくようになり、成長や前向きな姿を見ることが仕事のやりがいにつながっている。半年間、スーパーバイザーを経験したことにより、店長としてスタッフと近い距離で働きたいと思う気持ちが大きくなった。

 店長を目指す人は多くはないが、まだ気づいていない仕事の楽しさが「店長になったからこそ見つかることもある。チャンスがあるなら、チャレンジして欲しい」と話す。

「イエナ」渋谷スクランブルスクエア店 原順望さん 

一人ひとりの役割を明確にし頑張りに

「お客のリアルな反応や声を本社に届けられて、実際に反映された商品をおすすめ出来ることもうれしい」という

 原さんは店長として10年以上の経歴があるベテラン。自分が経験を積み重ねる中で店長を目指す人が増えて欲しいという思いが芽生え、店舗でキャリアを積むことが出来る「ベイスター店長」になった。ベイスター店長は店長職の価値向上を目的とした制度で、一定の業績条件と事業部の推薦、面接などを通過すると認定される。

 店長になりたての頃は荷が重いと感じることもあったが、5、6年経って余裕が出てきてからは自分のキャリアについてどうしていくべきか考えるようになった。

 転機は前任の店舗での出来事だ。仕事を続けるか悩んでいるスタッフに、やりがいを感じてもらいたいとそのスタッフの強みだと感じていた育成の役割を任せた。「こういうことをやりたい、後輩に教えたい」と声があがり、仕事に意欲的になっていった。実際に育成した新人も目に見えて成長し、上司からも評価されるほどになった。頑張りがスタッフ全員に連鎖していき、店全体の雰囲気も良くなり売り上げにもつながっていった。

 その経験をきっかけに、店長の楽しさを伝えて、店長を目指す人をもっと増やしたいと考えた。頑張ることの楽しさややりがいを店の中だけでなく、ブランドや社内の人にも見てもらいたいとベイスター店長に立候補し認定された。「結婚していても、子供がいて時間短縮勤務でも、仕事はきちんと評価されるし店長の仕事をやっていけると伝えていきたい」と話す。

 店長の仕事は一人で頑張るものではなく、スタッフと互いを理解して働くことが大事だ。実体験を重ねたからこそ、スタッフの気持ちに寄り添えるようになり、人としても成長が出来たという。

《バックルーム》

 やはり店長になりたがる人は多くないという話を取材の中で聞いた。だが、一緒に働くことで「店長を目指すと言ってくれたスタッフもいます」という声もあった。店長を目指すスタッフを育成するには、店長自身が仕事に対して前向きで明るい姿を見せることが重要なようだ。ある店長が「大変じゃない仕事なんてないですし、やっぱりこの仕事が好きなんです」と語ってくれたことが印象深い。店長になって、不安な気持ちや苦労する出来事があってもそれを乗り越えた経験が、好きな気持ちを大きくしている。どんなところにやりがいを感じ頑張ろうと思うかは人それぞれだが、根底にあるのは好きだと思う気持ちなのかもしれない。

(繊研新聞本紙19年11月25日付)



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