ゴルフウェアメーカーのスタッツ(東京、片山良二社長)が、同業のウィッツ(京都市、橋本康恒社長)と組み、百貨店紳士服売り場の再生に挑戦している。両社で紳士向けのセレクトショップ業態「tovho+STATS」(トヴホプラススタッツ)を開発し、紳士カジュアル売り場に参入。従来のNBとは異なる魅力的な売り場を作り上げていることから、新しい百貨店の姿を示す取り組みとして注目される。
■セレクトショップのように
トヴホプラススタッツは、ウィッツが手掛けるトータルブランド「tovho」(トヴホ)と、スタッツが製造するシックでエレガントな単品特化ブランドの「TRATTO」(トラット)、「MOCO」(モコ)、「JWO」(ジェイダブリューオー)、「testarte」(テスタルテ)、そして多目的なシーンにフィットする“着回しウェア”をコンセプトにした「rue de R」(ルードアール)などの外部仕入れ品をミックスした編集業態だ。アンティーク什器などを使ってセレクトショップのような雰囲気を作り、旅を切り口としたライフスタイル提案型の売り場に仕上げている。
20年9月に高島屋大阪店紳士服売り場に出店したのを皮切りに、同11月に丸井今井札幌本店、21年2月に松屋銀座本店、同3月にいよてつ高島屋と大丸京都店、同4月にあべのハルカス近鉄本店に出店した。さらに3月10日には、イセタン羽田ストアターミナル1にも長期の期間限定店として入った。どの店舗も「同質化する既存の百貨店紳士カジュアル売り場では異彩を放ち、売り上げの起爆剤になっている」(スタッツの片山社長)という。
■百貨店に代わって平場を運営
当初は、大手アパレルメーカーが百貨店事業を相次ぎ縮小したことで生じた“空床”を埋める形で出店するケースが目立ったが、最近は百貨店の将来を見据えて戦略的にトヴホプラススタッツを誘致するケースが増えている。
同業態の強みは、①高品質・高機能というゴルフウェアの特性を生かしつつ、半歩先行くカジュアル服として、旅の具体的なシーンを設定して提案できている②1社・1ブランドでは難しい通年MDを、2社による複数のブランド展開で実現している③人件費などの運営費はウィッツと2社で折半し、出店・運営リスクを減らせている④大手アパレルメーカーの退店に伴い解雇された販売員で、商圏内に多くの顧客を抱えている優秀な人物を採用できている⑤大掛かりな内装工事をすることなく、ほぼ居抜きで出店できること――などだ。
さらには立地や館の特性に応じて、MDも柔軟に変えることができるため、百貨店に代わって紳士カジュアル売り場の平場を構築できるのも、大きな特色。スタッツの片山社長は、「百貨店のバイヤーとやり取りしながら、これから話題となりそうなファクトリーブランドなども扱い、MDを肉付けしていくことが可能。もちろん設定するテーマも、旅だけでなくアウトドアや大人カジュアルといった色々な切り口で編集することができる」と話す。
■アフター・コロナを見据えて
新型コロナウイルスの影響などで、百貨店は業界全体として苦戦を強いられている。しかし片山社長は、「良識ある50~70代の大人がお買い物をする場として、百貨店の魅力は依然高い」として、今後もトヴホプラススタッツの出店を継続する計画だ。
21年秋に5店、22年春にはもう5店を新規出店し、17を上限に店舗数を広げる。標準的な広さは35~100平方㍍で、地方店ならカジュアル色の強いウィッツのゴルフウェアブランド「ダンスウィズドラゴン」との併設型もあり得るという。17まで出店した後は、スクラップ&ビルドを進めて収益性を向上させ、年間で10億2000万円ほどを売り上げる業態へ育成する方針だ。
アフター・コロナの社会では、消費行動は自身のライフスタイルを向上させるものへと大きく変わると予想されている。片山社長は「その時、百貨店が『大人の商業施設』として再び輝けるよう、トヴホプラススタッツが最適な業態であることを提案していきたい」と強調する。
お問い合わせ先【https://stats-golf.com/】
企画・制作=繊研新聞社業務局