【記者の目】大手スポーツ専門店 新業態開発を活発化

2019/02/10 06:30 更新


 大手スポーツ専門店チェーンが新業態開発を加速している。全般に新規出店を抑制し、EC部門を強化すると同時に、既存店の業態転換や大型改装により店舗の活性化を進めている。小売市場のEC化に伴い、これまでの総合量販型店舗は飽和状態に近づいてきているため、出店戦略を見直し、投資を新業態やECといった新たな成長軸に振り向けている。

(小田茂=大阪編集部スポーツ担当)

リアル店ならではの価値

 アルペンは昨年10月に名古屋市内の既存店を改装してアウトドアの新業態「アルペンマウンテンズ一社店」を開店した。同4月に開業した新業態「アルペンアウトドアーズ春日井店」が好調なことから、さらに山関連に絞り込んだ業態とした。先行したアウトドアーズではアウトドア用品を多数展示、料理教室やヨガ体験、店内ライブなどイベントも行い、「いつも楽しいことがあるリアル店ならではの価値を提供」して好評という。

各社の新業態開発ではアウトドア関連が目立つ(アルペンアウトドアーズ春日井店)

 三重県津市では同10月に既存の総合型スポーツ店を業態転換して、大型のゴルフ専門店「ゴルフ5」を開設する一方、11月には近隣に開業したイオンモール津南へ総合型スポーツ店「スポーツデポ」を出店した。同社では珍しい大型SCへの出店となるが、今後も条件によっては大型SCへの出店を検討する。

 ゴルフ5ではワンランク上の「ゴルフ5プレステージ」を昨年6月に新宿店、12月に広尾店を出店した。同業態でも既存店とは違う「特別な店」という位置付けを重視する。

 EC部門では昨年9月に公式オンラインストアを刷新し、前年比50%増の推移となっている。今年4月からは新たなポイントプログラム「アルペングループメンバーズ」を開始する予定で、オンラインストアでは先行導入を開始した。昨年3月にはEC専用の物流センターを千葉県に立ち上げ、顧客サービスレベルを向上させた。EC売上高比率は前期が3%ほどで、今期は4%台にまでは引き上げる計画だ。

 ゼビオは昨年9月にオープンした「スーパースポーツゼビオ渋谷公園通り店」で、新サービスとして全国の店舗と連携した商品の取り寄せや24時間商品が受け取れる「フルタイムロッカー」を導入した。店頭商品に加えて、全国の系列約170店の商品を大型モニターで顧客が検索して購入することができる。取り寄せした商品は店舗の営業時間外でもフルタイムロッカーで受け取れる。想定した購買パターンはまだ定着していないが、引き続き顧客の利便性向上を重視する。

ゼビオの「スーパースポーツゼビオ渋谷公園通り店」では他店の商品が取り寄せできる

 同10月には初めてキャンプをメインにしたアウトドア専門店「エルブレス名古屋みなと店」を出店した。同社では小型業態と位置付ける660~1320平方メートルの店舗で、これまで出店できなかった立地、面積に出店余地を模索している。「大型業態がいずれ飽和する中、スポーツというテーマでどう表現するかは引き続き中長期的な課題」としている。

ECとの連携を重視

 ヒマラヤは16年から計画的な退店を行い、新規出店を抑制、子会社の競技系専門店ビーアンドディーも他社へ譲渡すると同時に新業態開発に着手した。アウトドアのセレクトショップ「嵓クラ・ホリック」とスポーツファッションのセレクトショップ「スタイル&プレイ・グレートヤード」をそれぞれ2店出店、昨年9月には日本橋高島屋SCに第3の新業態「タウンライン」を開店した。既存店の大型改装も広げており、店頭受け取りカウンターを設置するなどECと連動した店作りを進める。

 メガスポーツは昨年11月に「スポーツオーソリティ港北センター南店アウトドアスタイル」内で、初の店内併設型となるニッポンレンタカーサービスの営業所を開設した。乗用車と共にキャンピングカーのレンタルが可能で、非常に好評という。ファミリー層が多く、一度キャンピングカーを使ってみたいというニーズがあるようで「車を借りれば、ギアも買われるので、両者にメリットがある」と見ている。

 同社では同6月にも新業態のライフスタイルセレクトショップ「アウトサイド・ザ・ボックス」の3号店をイオン・レイクタウンに出店した。スポーツブランドと共に、特に好調なアウトドアブランドを充実している。16~17年度はスニーカーセレクトの「コーナーズ」を含めて78店を新規出店したが、在庫が膨らみ、前期(18年2月期)は業績が悪化したため、今期は「リバイバルプラン」を実施している。

 スポーツ業界は20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて活気付いているが、国内の少子高齢化や競技人口の減少といった市場縮小にはあらがうことが難しい状況にある。スポーツ用品市場では従来の量販業態による供給過剰は今年も続くと見られるため、現状の主力業態による販売競争に対抗しながら、次の成長へ向けた芽を開発する動きを活発にしている。

(繊研新聞本紙1月7日付)

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