【パリ=松井孝予通信員】EU(欧州連合)と米国の通商交渉の合意により、欧州製品の関税は15%に決まった。フランスのバイル首相は「自由な民が結束して築いた同盟が、ついに屈した」と述べ、超党派で反発が噴出。政府は経済産業省に関係団体を招集させ、影響の把握を進めている。
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欧州のファッション産業では、既に実質的な影響が出ている。「プーマ」は、5月初めに発効した対EU関税により北米売上高が9%超減少。アジア製品にも関税が課されており、二重の打撃を受けた。同社は25年通期で約8000万ユーロの損失を見込んでいる。
フランスのファッション・ラグジュアリー、コスメティック産業への波及はこれからと見られている。化粧品業界団体FEBEAは、「これまで関税の適用外だった化粧品が初めて課税対象となる」ことに危機感を示し、年3億ユーロの損失と最大5000人の雇用喪失の可能性があると警鐘を鳴らす。特に中堅・中小企業の価格転嫁能力を懸念する声が強い。
ラグジュアリー産業では、LVMHが関税合意に先立ち、27年にテキサス州で「ルイ・ヴィトン」のアトリエを新設する計画を発表した。通商リスクへの備えとして現地化を進めている。
一方、ケリングのフランソワアンリ・ピノー会長兼CEO(最高経営責任者)は5月、「グッチを米国で作る意味はない」と発言した。「エルメス」も仏国内での生産強化を進めており、国外生産には背を向けている。各企業の対応は、メゾンの哲学や市場認識の違いを映し出しており、今後、通商環境の変化にどう影響していくのか注視される。