スポーツメーカー 企業ユニフォーム事業拡大 スポーツ開発のノウハウ生かす

2020/09/14 06:30 更新


 国内スポーツメーカーは建設・土木や運輸業など企業向けユニフォーム事業を強化している。強みであるスポーツ向け開発のノウハウを活用し、動きやすいワーキングウェアや機能性を盛り込んだシューズを開発している。東京五輪は1年間延期されたが、国内スポーツ市場は少子高齢化や参加人口の減少で縮小傾向にあり、企業ユニフォームを自社の商品開発力を生かした新たな成長分野として期待している。

(小田茂)

 アシックスジャパンは道路建設などを行う日本道路(東京)の新しいユニフォームを企画・生産し、9月1日から着用されることとなった。シンボルマークやコーポレートカラーを意識したデザインで、従業員の意見を反映し、使いやすさを追求した。環境に配慮して、素材は東レが開発した、原料にサトウキビの廃糖蜜などを含む植物由来のポリエステル繊維を採用した。

 同社では19年シーズンからホンダのF1にテクニカルスタッフのウェアやシューズを提供しているが、本格的な企業向けユニフォームは初めて。これまでワーキング分野ではシューズを主力としてきたが、ユニフォームも「これを皮切りに今後広げていきたい」としている。

アシックスジャパンが企画・生産した日本道路の新ユニフォーム

 ミズノは19年春にワークビジネス事業部を新設した。企業向けユニフォームは1997年から手掛けているが、16年からワーキングシューズを開始し、昨春から本格的にワーキングウェアを拡大し、事業売上高は3年間で2倍近くとなった。前期(20年3月期)は猛暑対策の企業納品が好調で、ホームセンターなど小売店での扱いも増え、売上高53億円(前期比34.9%増)となった。今期は医療・介護、製造業分野にも進出し、来期には売上高100億円を目指している。

 同事業部では法人営業部を前年の20人台から約90人に増強し、全国の支社へ配置した。ユニフォームに関する様々な展示会にも積極的に出展し、新規企業や自治体関係との取り組みを広げている。「スポーツメーカーだからこそできる価値の創出・提供で差別化を図る」方針だ。

ミズノのワークビジネスは安全性や快適性など企業の課題解決型商品を提供

 デサントジャパンではこのほど、地図のゼンリン(福岡県北九州市)の地図調査スタッフユニフォームに「デサント」の半袖ジャケットが採用された。「夏場でも屋外のスタッフがすぐに羽織れて暑さ対策もできるウェアを」という要望を受け、ジャケットは太陽光を遮断し、ウェア内の温度上昇を抑制する素材を使用した。

 同社では今年からホームページ内にBtoB(企業間取引)事業専用窓口を設けるなどユニフォーム事業の拡大を目指している。これまでもメルセデス・ベンツ日本やアスクル、YMCAなどにユニフォームを提供しており、今後も様々な業界や形態でのBtoB事業に注力する。

地図のゼンリンに採用された「デサント」の半袖ジャケット

 ゴールドウインはアウトドアブランド「ヘリーハンセン」で、大阪の近畿大学と水産業者向けワーキングウェアの共同開発を進めている。同ブランドはノルウェー本国では漁師用防水ウェアが多く利用されていることから、日本でも水産業に対して貢献できないかを模索していた。

ゴールドウインの「ヘリーハンセン」の水産業者向けワーキングウェア

 このようにスポーツメーカーの企業ユニフォームは比較的ブランド知名度も高いことから好評で、有力企業に採用されるなど順調に推移している。一方で、ワーキング市場は東京五輪関連需要で近年伸びてきたが一巡してきており、新型コロナウイルスの影響で企業の投資意欲も減退してきている。今後はさらに市場争奪競争も激化しそうで、独自商品の開発がカギとなりそうだ。

(繊研新聞本紙20年8月13日付)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事