「スピンズ」が個性あふれる店作りを進める狙い

2018/06/11 06:28 更新


 ヒューマンフォーラム(京都市)のメンズ・レディス「スピンズ」が、個性的な店作りを進めている。18年春は、京都本店に〝インスタ映え〟を狙った試着室を設けたり、アメリカ村店にアップサイクルや古着をテーマにしたカフェを加えるなど、新たな提案を盛り込んだ。音楽やお笑いなど様々なイベントが楽しめるステージも設け、カルチャーのつながりを生む場も目指している。今後、他店でも地域の特性をとらえた独自の店作りを推進する。

(小畔能貴)

試着室を目当てに

 3月に大幅な改装オープンをしたスピンズ京都本店。改装コンセプトを決める際にヒントにしたのは、10代前半~20代前半の女の子がときめくことだ。数ある中から「SNS」「韓国」「お笑い」に着目し、これらによって楽しめる店作りを狙った。

 中でも面白いのがフィッティングルーム。ファンシー、トイ、アンティーク、モノトーン、ロック、西海岸とテイストが異なる6部屋はインスタ映えを意識し、各部屋の表現にこだわるとともに、複数人でも入れる広さの確保や自撮りがしやすい鏡の配置もした。改装して最も好評な部分で、それを目当てに来店するお客も目立つ。

大幅に改装した「スピンズ」京都本店
“インスタ映え”を狙い、モノトーンをテーマにした試着室

 韓国のフォトジェニックスポットをイメージし、ピンクで統一しつつネオン管も活用したコーナーも人気だ。韓国コスメを提案しているが、ここもフォトスポットとして多くの女性が利用している。

 売り場を縮小し、初めて設置したステージでは、お笑いをはじめ、音楽など様々なイベントを実施している。自社企画で回すだけでなく、レンタルスペースとしての貸し出しも進み始めた。地域とさらにつながることで、様々なカルチャーが楽しめる機会を広げていきたい考えだ。

アップサイクルも

 もともと1フロアだったアメリカ村店は4月、2階に新業態「スピンズ・ビンテージ&カフェ」を加える形で、倍に増床オープンした。初めてカフェを設け、アップサイクルなど多様なカルチャーとつながる空間にした。古着は既存店より上の価格帯のものを中心に揃え、既存の店より上の世代も楽しめるようにした。

アメリカ村店のカフェ。奥のステージで様々なイベントを繰り出す

 アップサイクルは、店頭で回収した服などを使って、バッグやエプロン、クッションなどに生まれ変わらせ、カフェの中で活用している。アップサイクルを身近に感じてもらうため、ランチマットを制作するワークショップもすでに行った。

アップサイクルしたクッション。今後は販売もしていく

 店内にはアップサイクルを実現するため、ミシンを置いたリメイクルームを設置。ここでお客が持ち込んだ古着をアップサイクルし、新たな付加価値を持った1点物として販売したり、購入した古着のリサイズも請け負う。

 カフェにあるステージでは、大型連休に著名DJを招いた音楽イベントを複数実施し、盛り上がった。今後も音楽だけでなく、他社と協力して学校では学べないようなことをテーマにした勉強会なども実施していく。

 両店が新しくなってからの売り上げは計画を上回っており、とくに京都本店に手応えがある。どちらも併設したステージを生かすことで、従来とは異なる新しい客層の獲得が進み始めた。今後も多様なカルチャーイベントを仕掛け、お客との接点を広げていきたい考えだ。

 今夏は、東京・中野や広島などで新規オープンや移転リニューアルが控えている。引き続き、それぞれで個性的な店作りを進めていく。

■各店が地域に寄り添う

岩月臣人スピンズ事業部長

岩月臣人スピンズ事業部長

 スピンズは14~15年に出店攻勢をかけて全国に店舗を増やしましたが、その時にチェーンストア化が進み、同じ内装や品揃えが広がりました。個々の店で個性が表現出来なかったせいか、その時の業績はそれほど良くありませんでした。

 そこで、16年頃から店長や店舗に権限を移し、地域に合わせた店作りに着手しました。今春に新しくなった京都本店やアメリカ村店はいずれも店長が中心になって構想を練り、具体化したものです。

 現在24店がありますが、マーケティングや品揃えはまだ6~9割を本部が主導で行っています。これからは各店が独自で行う比重をもっと増やしたいです。同時に目指すのは地域に寄り添えるような店作り。地域にある楽しい特色やカルチャーをとらえ、つながりを生み出すことを改めてブランドの価値にします。 



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