今、あえてブログにこだわる専門店 その理由とは?

2019/07/15 06:28 更新


 オンラインでの情報発信は今やファッション専門店にとっての必須条件。情報をうまく拡散することができれば、店の立地に関係なく、全国各地からファッション好きを集客できる時代になった。ここ数年はインスタグラムの勢いが増しているが、今もブログに注力している店もある。

 こうした店は、ブログの方がSNSに比べて、細かな商品情報、オーナーの人間像を伝える手段としてたけていると捉えている。今、ブログ更新に力を入れる理由を聞いた。

ジャム 接客感覚で丁寧な情報発信

 群馬県伊勢崎市の「ジャムズ」(社名はジャム)は、11年に開業したメンズアメカジセレクト店。開店当時から現在まで、毎日欠かさずブログの更新を続けてきた。ブログが当時主流だったほか、独立前に務めていた店で効果を感じていたのが始めた理由だが、現在は店の情報を最も色濃く表現・発信できる手段と考えている。

 更新は福岡代表が一人で行う。主な内容は店で販売する商品の紹介だが、週に1度の店休日にはプライベートな情報も載せて親しみやすさを演出する。メリハリを付けるため、「商品情報と私生活は一つの記事に混在させないようにしている」。

 投稿予約機能を活用し、毎朝6時に更新する。通勤中や昼休みなどに見れるようにするためだ。この1本をマストに、場合によっては午後も数本投稿する。現在、1日平均で2000PVに達しており、アメブロ内のアパレルショップランキングでも上位に位置しているという。記事を書くコツは、文字を多くしないこと。行間を空けたり、数行ごとに写真を挿し込み、「読んで疲れない」ように気を配る。商品紹介では、見出しに商品名、本文の冒頭にキャッチーなタイトルを付けるようにしている。

 SNSが主流のなか、ブログに最も力を入れているのは、「細かく丁寧に説明ができて、接客に近い感覚。自店の顧客に適しているから」だという。ブログを起点とし、メルマガ、SNSと連動させ、負担を少なくしている。動きの鈍い商品をブログで紹介すると、直後からウェブや実店舗で急に売れ始め、完売することもあるという。「新しいツールを使うのも大事な一方で、継続することも重要。一つツールのみになると、それが廃れた時に大変になる」と注意を払う。

ブログの写真は必ず自身の顔を出すようにしているほか、転載対策で掲載ブランドと店のロゴを入れるようにしている

ステュードベーカーインターナショナル 顧客とつながるツール

 茨城県土浦市とつくば市で「デルボマーズ」などのアメカジショップ3店を運営するステュードベーカーインターナショナルの佐藤誠司代表は顧客とつながるコミュニケーションツール」と位置付け、1日おきに更新を続ける。

 ブログの原型は25年前の創業時から店頭で購入客に配布してきた手書きの「デルボマーズ新聞」までさかのぼる。おすすめ商品だけでなく、スタッフ紹介や佐藤代表のコラムなど連載形式で情報発信してきた。当時は同新聞目当てで来店する客も現れるほどの人気で、売り上げ拡大にとっても欠かせない存在だった。

 15年前からホームページ上から佐藤代表によるブログの発信を開始した。おすすめ商品などモノにフォーカスした店舗発の公式ブログとは異なり、代表自身の人間像を伝えるのが目的だった。オートバイやサーフィン、ガンダムなどプライベートの趣味や展示会の感想などを載せることで、「店頭で気軽に話しかけるきっかけになってほしい」との思いもあった。その後、ヤフーブログ、アメーバブログと移り、インスタグラムが主流となった今でも続けている。

 ただし、「しっかり読んでもらわなければ伝わらない」ので、更新頻度を毎日から下げ、写真の大きさや配置、文章の改行位置などには細心の注意を払う。スタッフのブログではスタッフがモデルになるスタイリング写真は載せないように徹底している。「服の着方は顧客が主役なのでスタッフの好みでイメージを固定させたくない。多彩なコーディネート提案はリアルな売り場にしかできない役割だから」と強調する。

「25年前に始めた手書きの『デルボマーズ新聞』がブログの原型」と佐藤代表

343 独自の発信で“色”伝える

 セレクトショップ「ルーム」(rroomm、京都の店はlloomm)を関西で3店運営する343(大阪市、南裕介代表)は、自社のホームページでほぼ毎日ブログを更新。インスタグラムも活用はするが、「ブログは内容次第で読み手の想像力をかきたてられるなど奥深さがある。店の〝色〟や個性も出しやすい」と利点を振り返る。

 ブログは南代表や大阪のメンズ(ユニセックス)店の安田卓弘店長ら3人が中心に手掛ける。09年に最初の店を開設して以来、継続しており、現在は月間で平均10万の閲覧数になっている。とくに活字を読むのが好きな20代後半以上の客層がブログへの反応が良く、ブログをきっかけに来店してくれ、会話が弾むケースもある。

 ブログ上で重視していることは、写真をなるべく多めに使用し、店独自の捉え方や提案をしていくことだ。例えば、ブランド公式の画像を使うことはなるべく避け、自分たちで撮影場所まで考えて撮影している。撮影方法やスタイリングに工夫することで、店の個性を伝えていくことを欠かさない。扱いブランドや商品だけでなく、デザイナーの魅力について紹介することもある。

 こうした積み重ねが、別の店・ECで同じ商品が買える状況だったとしても、「この店で買いたい」と思ってもらえる結果につながると考える。

 「お客が入手出来る情報が早くなり、店を回るよりもスマホで調べて買い物する人が増えている」中で、今後も引き続きブログを活用し、店独自の発信を重視していく。

読み手にイメージが広がるようなブログを意識している南代表(左)と安田店長

(繊研新聞本紙19年6月13日付)



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