そごう・西武 百貨店再編第2幕の呼び水㊦

2016/11/14 11:04 更新


縮小均衡からの脱却を

 地方・郊外店の構造改革が迫られているのは、そごう・西武だけではない。三越伊勢丹は17年3月に三越千葉店、三越多摩センター店、阪急阪神百貨店は17年7月に堺北花田阪急を閉鎖する。大手百貨店は中間マーケットの縮小、堅調だった高額品の伸び悩みを機に、経営体質の強化に本格着手している。

婦人服を圧縮


 大手百貨店の地方・郊外店は14年4月の消費増税以降、不振が続く。高島屋は16年3~9月の地方店(12店)の売上高が2・7%減だった。都心の大型店(5店)の1・2%減に比べ、落ち込み幅が大きい。ボリュームゾーンは依然、水面下にあり、「節約志向がさらに加速している」(木本茂高島屋社長)。

 最大の要因は主力の婦人服の落ち込みだ。高島屋は婦人服の売上高が15年下期に7%減、16年上期に7%減だった。効率が悪化した婦人服を圧縮、雑貨や化粧品を増やす動きが相次ぐ。大丸松坂屋百貨店は売り場面積に占める婦人服の比率を14年の26%から現在の23%に下げた。「婦人服はまだ3割くらいの過剰感がある」(山本良一J・フロントリテイリング社長)と商品領域を超えた自主編集やテナントに切り替える。高島屋は9月、港南台店の4~5階に家具専門店「ニトリ」をオープンした。大型テナントの導入で、一層の低コスト運営に踏み込む。

 従来の百貨店業態に固執するだけでは、苦境を抜け出すのは難しい。しかし、賃貸テナントの導入による低効率ゾーンの圧縮や要員の効率化には限界がある。脱百貨店戦略に転換したとしても、SCやEC専業との競合に打ち勝つことができないのは明らかだ。新たな地方・郊外店モデルの構築は急務だ。

 阪急阪神百貨店は関西圏の郊外の支店で、各地域に対応した品揃えやサービスを確立する。そのため、自社でコントロールできる売り場を全館の3割前後まで高めている。これまでの百貨店の地方・郊外店は、基幹店と同様の取引先から商品供給を受ける消化売り場がほとんどで、品揃えで独自性を出すのは難しかった。しかし、基幹店と同一のNBでも、支店はカジュアルなラインを基本にする。「阪急うめだ本店はハレの日、支店は普段使いに特化する」(森井規文阪急阪神百貨店取締役専務執行役員)と顧客の使い分けを前提にした店作りを推進する。


成功モデル確立


 H2Oはそごう神戸店、西神店、西武高槻店をセブン&アイから譲渡される。そごう神戸店は築82年で老朽化が著しく、大規模な店舗投資が必要だ。西武高槻店は阪急阪神百貨店の支店運営ノウハウが活用できる。関西圏のドミナント戦略をさらに加速、西宮阪急などの郊外店の成功モデルに磨きをかける。

 

無題

 

 

 三越伊勢丹は支店の新たな店舗モデル作りに着手する。支店の改革では松戸店(千葉県)を13年10月にリモデルした。約10億円を投じ、百貨店部分を2割減らして大型専門店を導入、衣料品に偏重した商品構成を見直した。20~30代のファミリー層を狙ったが、想定通りに売上高、利益を伸ばせなかった。

 「今までの延長線ではだめ。全く新しいタイプの店作りを目指す」(大西洋三越伊勢丹社長)と17年度から、首都圏の支店で地方・郊外店のモデル作りに着手する。外部企業と連携したグループのリソースを活用し、飲食やサロン、医療モールなど自社開発や地域独自のコンテンツを取り込んで、地域対応のスペシャリティーストアを目指す。

 店舗閉鎖による縮小均衡の負のサイクルから抜け出すには、地方・郊外店の再生に向けた新たなビジネスモデル構築が避けられない。効率的な運営手法の導入だけでなく、地域ニーズを取り入れた業態開発をはじめ、従来の枠にとらわれない商業施設への転換が必要になった。

阪急阪神百貨店の支店運営ノウハウの活用が期待される西武高槻店

(繊研 2016/10/13 日付 19569 号 1 面)



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