《縫製トップに聞く③》イワサキ 安達正敏社長 新たなブランドとも柔軟に物作り

2022/07/21 06:25 更新


安達正敏社長

 イワサキ(東大阪市)は、プレタの婦人服が中心の縫製工場だ。「服を作る前に〝人〟を作る」を信念に、社内の職業訓練校で技能者の育成を続け、高い技術力を強みとする。コロナ禍を経験してからは、より柔軟なスタンスで、新たなブランドとも物作りをするようになった。減った人員もコロナ禍前の水準に戻す予定で、インターンシップや働きやすい環境の整備に力を注いでいる。

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■ピンチはチャンス

 20年は全体の生産計画は減ったが、特許を持つインコードロック縫製の受注は続いた。一方で、供給がひっぱくしていたマスクや医療用ガウンを生産ラインの半分で縫った。コロナ禍が続き、アパレル生産主体へ戻った21年の方が厳しかった。アパレルメーカーの展示会に来る人は少なく、受注が落ち込んだ。自主的に退職する人材も出て、人員は以前の3分の2になった。

 ようやく受注が戻り始めたのは22年に入ってから。大手アパレルメーカーから新規の問い合わせもある状況だ。人員が減ったので、生産能力は下がり、11月前半まで生産ラインが埋まっている。縫製加工賃の方は少しずつ上昇してきた。適正な加工賃についていけずに、取引を休止したところもある。今は作り手の方が条件的に少し強くなっているのかもしれない。

 ピンチはチャンスと言うが、今ではコロナ禍を経験して良かったと思う。例えば、これまではどちらかと言えば条件にしがみつくイメージだったが、そうしなくてもいいのだと気付いた。こだわった物作りを求める新しい企業やブランドはほかにもあり、互いに納得する形で取引もできる。会社としていろいろな考え方が出来るようになった。

高い技術や品質を期待する注文が戻り、11月前半まで生産ラインは埋まっている

■寮や保育園も整備

 これから人手は元に戻す。受注がどれぐらい戻るかは予想しにくいが、コロナ禍前の人員をイメージしている。課題の閑散期については、今年から新規取引先とある程度作り置きのできるアイテムの生産を開始した。

 今年からインターンシップも実施している。当社はグループで物作りし、4~5年がんばれば一通りの縫製技術が習得できる人材育成を実現。このため、全国から入社希望者が多いのだが、学生には5日間の日程で、当社や業界について理解を深めてもらうことを目指している。

 働きやすい環境を、と企業主導型保育園を設立して3年目に入った。従業員以外の地域住民を含む20人近くが入園している。育児休暇や出産休暇も整備していて、産休を終えた人材が今年4月から職場へ復帰してくれた。

 社員寮を完備し、縫製にあたる女子社員のほとんどは寮で生活している。安心して働ける環境だし、チームで連携して良い物を作りやすい。ただ、今後はチームプレーで成果を出すことを前提に、自宅通勤も選びやすくする予定だ。

(繊研新聞本紙22年6月29日/小畔能貴

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