「危機的状況にある日本の伝統工芸産業の復活の一助になりたい」。この思いから、新たに文化的な事業を始動したのはエネルギー関連の関彰商事(茨城県つくば市)だ。創業115年を迎える企業で、伝統工芸とアーティストの融合によって新たな付加価値を生み出すインテリア商品を開発し、新規事業の創出を目指す。まずは地元、茨城県の伝統工芸にフォーカスし、順次全国に広げる計画だ。その魅力を国内外に発信し、伝統工芸の持続的な成長につなげていく。
今回の取り組みを「クラフテリアート」(造語)と名付けたキュレーターの津延美衣さん(美時間代表)の協力のもと、昨年から伝統工芸の活性化に乗り出した。担当するのは同社シニアアドバイザーの中島重夫氏。伝統工芸に関する産業は後継者問題も深刻で、従事者は50年ほど前の28万人から5万人以下まで減り、生産額も約6分の1まで縮小したという。
ある職人から「良いモノを作っても売れる時代ではない」と聞き、「使い手にまで伝え、届ける場、新たなマーケットの構築が欠かせないと実感した」と強調する。
茨城県の伝統工芸の中から、笠間焼をはじめ、桂雛(城里町)、西の内和紙(常陸大宮市)、水府提灯(水戸市)などから始めた。先進事例は、水府提灯を150年間作り続ける鈴木茂兵衛商店とビジュアルアーティストのミック・イタヤ氏の協業。LEDを使ってワンタッチでついたり消えたりする、自由でポップな形の「すずも提灯」だ。そのほか、歴史のある桂雛を一年中飾れるようにしたインテリア雛をはじめ、その雛人形のきものの配色や柄の生地をフレームで飾った作品、西の内和紙を使った実用性とファッション性を兼ね備えたクッションなどもある。
伝統工芸には作家として成立しているものもあるが、様々な地域の職人の分業によって一つの作品が完成する場合もある。産業全体を底上げするためにも、既存の伝統工芸とアートはもちろん、伝統工芸同士、異業種などとの協業による高付加価値の追求が欠かせない。こうして生まれた作品は新たな需要を喚起する可能性を秘めている。プロデュースする側の関彰商事は、プロモーションのほか、強みの営業力・多様なネットワークを生かした販路開拓にも力を入れ、世界への発信に挑む。

