1932年9月17日は、小説家のロバート・ブラウン・パーカーの生まれた日です。アメリカのマサチューセッツ州に生をうけています。ボストンの私立探偵「スペンサー」の生みの親として広く知られています。スペンサーが登場するのは、73年の『ゴッドウルフの行方』が最初です。
スペンサー物が大きなうねりとなるのは、『初秋』以降でしょう。81年に発表され、スペンサーの優しい人間性が強く前に出ています。これでブームになった、と言っても過言ではありません。
パーカーはスペンサーで多くの「服装」を語った作家です。言わば「ファッション小説」でもあります。私立探偵はさまざまな人に会うのが仕事で、それらの服装をさりげなく描写したのです。少なくともアメリカの、ボストンの、70年代以降の服飾史の一端があらわれています。
例えば「スーツは一分の隙もなく、ズボンにぴんと筋がついている。羽をさしたチロル帽をかぶり、白いレインコートはいつも着たままだった」。これは『ゴッドウルフの行方』のマーティン・クワーク警部補の着こなし。当時のボストンでは警察官はそんな格好だったのでしょう。(服飾評論家・出石尚三)