9~11月に開催された「ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会」は、初のベスト8となった日本代表の躍進もあり、盛り上がった。45試合の観客動員数は170万人を超え、テレビ放送された日本代表戦5試合の視聴者数は、約8700万人に上った。ワンチーム、ジャッカル、笑わない男…。流行語も次々と生まれ、人気に拍車をかけた。
■特需で恩恵
スポーツ用品関連企業は、「W杯特需」の恩恵を受けた。ゴールドウイン傘下のカンタベリーオブニュージーランドジャパンが手掛けた代表ユニフォームのレプリカジャージーは、用意した20万枚が期間中にほぼ完売。7月の発売直後こそラグビー経験者の購買が目立ったが、開幕して日本代表が勝ち進むと、〝にわかファン〟の購入が急増。公式ECサイトでは、レプリカ購入者の75%が新規客だった。
W杯期間中に訪れた40万人もの海外観戦者の中には、各都市のスポーツ店に足を運んだ人も多かった。ドームが新宿駅近くで営業する「アンダーアーマー」の路面店では、W杯期間中に外国人客が増加。ブランド名をカタカナでプリントできるサービスの利用が増えたり、各国の国旗などをモチーフとしたTシャツが売れた。
ただ、W杯閉幕後の状況は明暗が分かれる。タグラグビーなど、各地の子供向けスクールの参加者や、大学ラグビー対抗戦の観戦者が増えているものの、大手スポーツ量販店では「ラグビー用品の需要はその後、盛り上がっていない」。
■事前販促を強化
一方、カンタベリージャパンは、「閉幕後もいい流れ」が続く。南アフリカ撃破に沸いた15年の前回大会では「ロゴの認知度こそ上がったが、実需にはほとんどつながらなかった」反省に立ち、今大会では事前のマーケティングを強化した。
開幕前に放映された、ラグビーをテーマとしたテレビドラマでは、プレー時の衣装だけでなく、日常でも着られるおしゃれなトレーニングウェアの「ラグビープラス」も提供。ブランドムックも発刊するなどして、積極的なブランド露出に努めた。すると、大会期間中から40~50代の従来ファンだけでなく、30代の新規客や女性客の来店が増加。定番品にも人気が波及し、ラグビープラスなどは既存客より若い層が買うようになった。
その結果、今期(20年3月期)のカンタベリージャパンの売上高は、前回大会のあった4年前の2倍を見込む。今後は、インショップの拡充や都心出店などに注力。来期の反動減を最小限に抑え、22年3月期には、再び今期並みの売り上げ水準を目指す。
20年も東京五輪の特需が期待されるが、そもそもスポーツ用品ビジネスは、日本人選手の活躍によって、各競技の注目度が大きく左右される。業界としては、選手の活躍に関わらず、主体的なマーケティングと販促の工夫で、五輪関連品や定番品の売り上げ増加を狙いたい。
(繊研新聞本紙19年12月16日付)