厚生労働省は〝リカバリーウェア〟と呼ばれている一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」に関わる企業を集め、同医療機器の定義や自主基準にのっとった事業活動をするよう改めて呼びかける目的で説明会を開いた。対象事業者に対し、1カ月をめどに自社製品の自主点検を促したほか、説明会の質疑応答などをまとめた文書を各都道府県の薬務課を通じて公表し、周知する予定だ。
(小堀真嗣)
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説明会はリアルとオンラインで開かれ、同医療機器の製造・販売に携わる企業約30社・80人が参加した。説明会の背景は、「そもそも薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律)が十分に理解されていない」(同省医薬局医療機器審査管理課)ことや、「定義から逸脱した標榜(ひょうぼう)が散見される」ことだ。冒頭で同省は、薬機法と医療機器の定義などの基礎を説明。その上で家庭用遠赤外線血行促進用衣の定義と自主基準を照らし合わせ、定義を逸脱した不適切な標榜の事例を挙げて改善を促した。
同医療機器の定義は、「血行促進作用が認められた製品で、疲労や筋肉のこり等の症状改善を目的とした衣類形状の器具」。ただし実態は、「腰痛など痛みや生理痛の症状の改善、冷え性などの体質改善など定義を逸脱している製品も見られる」と指摘した。この点には「臨床評価を経て、疾病の予防や治療に当たるような効果を標榜したい場合は、薬事申請し、承認を得る――といった適切な手順を踏んでほしい」と強調した。
製品の形状についても、定義外とみなされるような製品も見られる。「ワンピースやスカートは定義の範囲内か」との質問には、「被覆範囲や皮膚への密着度によって即断できない。(厚労省に)相談すれば個別に回答する」と応じた。
同課の担当者は「医療機器は〝規制産業〟。いくらでも売っていい物ではなく、厳正に管理された上で販売される物。人の命に関わるかもしれないこの領域で事業をするなら、薬機法を理解した上でしっかりルールを守ってほしい」と訴えた。一方で〝痛みに効く〟などと過度な期待をもって購入した消費者から、「効果を疑問視する声が厚労省にも届いている」と話し、「業界のイメージダウンにもなりかねない」と指摘した。
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■「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の定義
(一部抜粋)
遠赤外線の血行促進作業により、疲労や筋肉のこり等の症状の改善を目的とした衣類形状の器具。上半身用および下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部および大腿(だいたい)部を被覆。ただし、パーツ形状は含まないものとする
※自主基準では「衣類形状を有する製品のうち、長袖シャツ、長ズボン、半袖シャツ、半ズボンの形状を有するものだけが該当する」と明記
■定義から逸脱していると説明会で例示された使用目的・効果
疾病の治療、疾病の予防、腰痛、関節痛、炎症等の改善、神経痛、筋肉痛の緩和、疲労物質の蓄積の抑制、冷え性等の体質の改善・変化、平熱の上昇、免疫機能の向上、新陳代謝の促進、臓器・組織・細胞の活性化(胃腸の働きを活発にするなど)、むくみの改善、生理痛の症状の改善など