楽天ファッション・ウィーク東京23年春夏 若手支援のプログラムが充実

2022/09/07 11:00 更新


 楽天ファッション・ウィーク東京23年春夏は、将来性のある若手のブランドを支援するプログラムが複数設けられ、日本の若い世代で支持されている独特の感性を、より大きなマーケットのバイヤーや消費者に認知してもらう機会となった。一方で、初参加ブランドの中には、BtoC(企業対消費者取引)がメインで、卸売りのビジネスに至らない未熟さもうかがえる。発表する基準のあいまいさが課題として感じられた。

(須田渉美)

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〈フィジカル〉

 日本博のプロジェクトで初参加したクードス/スドーク(工藤司)は、テーラードのテクニックをベースに、少年のあどけなさを残したメンズのクードス、それを鏡に映した感覚で作るウィメンズのスドークをミックスした。スクエア型のステージに観客席も作り、その周りを男女のモデルが歩き回る。性を断定しないスタイリングとともに、様々な要素を内包する一つの空間を作り上げた。アームホールを極端に落とした袖の上に半袖を付けたシャツ。〝矛盾〟に着目しながら、きれいな立体のフォルムを作り、リアルクローズとしての軽やかさを感じさせる。上下を反転させて着用できるツーウェーのミドリフ丈セーター。前身頃の合わせをずらすようにパターンを切り替え、デコルテをのぞかせたシャツドレスなど、デイリーで艶っぽさのあるバランスが光った。

クードス/スドーク
クードス/スドーク

 ミツルオカザキ(岡崎満)は、都内のスタジオにある教会を背景に、退廃的なムードのショーを見せた。国内外の不安定な情勢に対する憤りと、平和を願う姿勢が見えるクリエイションだ。スポーティーなノースリーブトップに細長いパネルをつないだミドリフ丈のベストを重ね、ピースした手を刺繍したパンツ。シャツにはピースマークの直線を模したテープの装飾。岡崎らしい、きちんとしたテーラードの作りを土台にして、グラフィカルなモチーフで表現する。プリントのテクニックに頼らないところに服作りへの愛がある。

ミツルオカザキ

 初参加のピーエッチモード×トーキョーバイエムエフエフは、マニラ・ファッションフェスティバルと、繊維商社のスタイレム瀧定大阪が協業して22年に始動した。フィリピンのデザイナー10人が、スタイレムの生地をベースに、フィリピン原産の素材を取り入れたモードスタイルを制作。クラフト感と造形性に富んだディテールが目を引いた。

ピーエッチモード×トーキョーバイエムエフエフ

 初参加の沈み(伊豆味俊)は、沖縄を拠点にする兄弟が制作するワードローブを身体表現とともに見せた。アシンメトリーなドレスやハンカチーフヘムのスカートの裾に、アトリエで染めた絞りの柄が入る。伊豆味の「感情を表現した」美しさはあるが、スタイルの幅が狭く、単調な印象となった。

沈み

(写真=クードス/スドークは堀内智博、ミツルオカザキ、ピーエッチモード×トーキョーバイエムエフエフは加茂ヒロユキ、他はブランド提供)

〈デジタル〉

 ニーツ(新津祥太)は、和服の直線的なカットを現代のワードローブに融合したコレクション。きもののスリーブや前合わせを生かした体形を選ばないパターンに、スポーツ要素をミックス。袖にラインの入ったジャージーブルゾン、ネオンカラーの線が入ったメッシュのアウターなど、ユニセックスの重ね着を見せた。刺繍入りのスカジャンはリラックスムードに。パンツは膝下をカットして段差を付け、涼しさを伴ったユニークなフォルムで新鮮味を出す。

ニーツ

 ドレスドアンドレスド(北澤武志)は、前回の続編で、ダムタイプのアーティスト、古橋悌二氏の遺作「LOVERS」をがテーマ。暗い空間の中、テーラードスタイルの女性モデルが背を向け、走り抜け、見つめ合い、センシュアルなイメージを表現した。ルックでは、シャープなカットを取り入れたクラシカルなジャケットやコートなどを発表した。

ドレスドアンドレスド

 ニサイ(松田直己)は、「これから」をテーマにした若者の青春を描いたムービー。古着の素材を補修して解体し、つなぎ合わせたボリューミーなセーターやジャージードレス、クラフト感のある装飾のTシャツなどを着用した男女が、自宅や駅のホーム、浜辺で戯れる。甘酸っぱい爽やかさを感じさせた。

ニサイ




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