楽天ファッション・ウィーク東京23年春夏 鮮やかな配色やコミカルな柄

2022/09/06 06:28 更新


 楽天ファッション・ウィーク東京23年春夏は、大胆な配色やユーモアのある柄がポイントになった。作り手も、消費者も、デジタルの画像や動画に接することが日常化し、洋服の見せ方にも、おのずとその要素が反映されている。

【関連記事】楽天ファッション・ウィーク東京23年春夏 現代の視点で造形を再解釈

〈フィジカル〉

 日本博のプロジェクトで初参加したワタルトミナガ(富永航)は、キッチュなセンスにあふれたストリートムードのレイヤードスタイルを見せた。目を引くのは、グラフィック的な視点でつなぎ合わせていくクリエイション。多種多様な花が咲くフォトグラフの柄のシャツに、コミカルなペンギンが乗ったチェック柄のジャケット。アウターやパンツは、ドットボタンの開閉でレイヤードの変化を作る。異なる柄のパーツを付け替え、可変的な着こなしをインダストリアルなメリハリを付けて見せていく。そこにハンドクラフトの要素を持ったアクセントも加える。メタリックな生き物が描かれた鮮やかなブルーのジャージードレスに、スワンやローズのクロシェニットをつないだニットドレス。ネオンカラーの配色がグラフィックのプリント柄とコントラストを成し、コラージュアートのような印象に。古着のロックTやタイダイのTシャツをトロンプルイユのように付けたメッシュのアイテムもある。異質のものを取り込んで同化させる創造力とともに、人間的な温かみを感じさせるバランスが魅力的に映った。

ワタルトミナガ
ワタルトミナガ

 ショーの観客席には、古着のTシャツやポロシャツで背面をカバーしたカラフルな椅子が並んでいる。リコール(土居哲也)のテーマは「リブロックス」。80年代のアンコンジャケットの解体から始まるブランドの原点に立ち返り、再構築したテーラーリングのスタイルに、カラーブロックの配色を掛け合わせた。そのトーンは、土居が身近に影響を受ける、画家の祖母の絵画を反映したもの。柔らかな色彩で前後の色がコントラストを成すカフタンのようなウェアは、トレンチコートがベースとなっている。ショルダーを極端に角張ったフォルムにして、ソフトな素材のドレープ感を際立たせる。ヘアスタイルは80年代をほうふつとさせるリーゼント。トレンチコートの袖をカットしたドレス、ルーズフィットのジャケットの背中には、鮮やかでボリューミーなチュールのデコレーション。混沌(こんとん)とした印象もあるが、オートクチュール風の造形性が加わって、いつもよりドレッシーなコレクションになった。

リコール

 ペイデフェ(朝藤りむ)は、中野ブロードウェイにあるアトリエ兼ショップ前の通路でランウェーショーを行った。通路の奥から聞こえる笙(しょう)の生演奏。静かに現れるモデルが着用するのは、八百万(やおよろず)の生き物や植物が幻想的に表現されたプリント柄のワードローブ。角が強調されたカタツムリ模様のドレス、細長いべろを出した少女が描かれたベル型のスカート。可愛らしさと、おどろおどろしさが入り混じる。今回は自身の家系につながる、岩手県遠野地方の伝承に登場する「朝日巫女(みこ)」から発想を広げた。そのうえで「中学生から通っていた場所に店舗を持って12年やってきて、アングラやサブカルチャーの知識を深めた自分のルーツになるものをまとめた」と朝藤。モデルたちは、入り口に朱の鳥居が並ぶ「まんだらけ中野店変や」に入って立ち並ぶ。昭和時代のドールやプラモデルを背景に、時代を超え、カルチャー的に共鳴するエネルギーの強さを感じさせる。

ペイデフェ

(須田渉美、写真=ワタルトミナガ、ペイデフェは堀内智博、リコールはブランド提供)

〈デジタル〉

 大きなキャンバスに描いた絵画を見るような柄を毎回見せるヒロココシノ(コシノヒロコ)。今シーズンは果物、それも食べようとナイフを入れた断面を描いた。濃い色の南国の果物のようだ。果肉と房の筋、黒い小さな種、それらが規則的に並んだ柄。どれも着て楽しくなるようなタッチ。そのプリントのシースドレス、ベルト芯を通したところにギャザーを寄せたようなディテールのベアドレス、スポーティーなセットアップなどを揃えた。縦の切り替えのラインをパイピングしたブラウスも、ウエストを絞ると果物に見える。一方、黒、シルバー、モノトーンチェックのシリーズは、襟を切り込みのラインで作ったジャケットや、スリーブレスの直線カットのジャケットとワイドパンツなどクールな印象。

ヒロココシノ

(赤間りか)

 セヴシグ(長野剛識)は、カラフルな配色のアメカジスタイルのロックバンドの演奏を動画で見せた。ミュージックビデオのような演出で分かりにくいが、長野らしいひねりを入れた物作りが見え隠れする。ボリューミーなローゲージのセーターは、古いベッドシーツを裂いて手編みしたもの。その下には、馬の体に人の口がドッキングされたレトロなグラフィック柄のウェスタンシャツ。コミカルな明るさを感じさせるなかで、日常の生活で感じる「SNSの闇や人間の心の中にあるゆがみに着目した」と長野。スウェットには、飲料メーカーのロゴをもじった「crockedlove」(ゆがんだ愛情)と刺繍が入る。何げないワードローブでピリッとジョークを利かせるセンスが楽しい。

セヴシグ

(須田渉美)



この記事に関連する記事