楽天ファッション・ウィーク東京22年春夏 異なる時代やスタイルを掛け合わせ

2021/09/08 06:27 更新


 楽天ファッション・ウィーク東京22年春夏は、異なる時代のファッションやスタイルの掛け合わせが目立った。海外から参加するブランドもその傾向で、表現力の強さをもって、オリジナルのスタイルに作り上げるところが面白い。

(須田渉美、写真=エイチシー・タカシイトウは堀内智博、他はブランド提供)

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 ハレ(ハレデザインチーム)は、テクスチャーの異なる素材のレイヤードに着目し、多様性を感じさせる男女それぞれの着こなしを動画で見せた。アクセントになっているのは、クロシェニットやメッシュなどクラフト感のある編地だ。花柄クロシェのトップとマーブル調プリントのスカート。揺らぐ柄が下からのぞいて奥行きが出てくる。ふんわりとプリーツがかかったようなロング袖のトップは、下に合わせた赤とピンクのクロシェのパンツの花柄が透けて見え、ストリートスタイルなのに大人っぽさが際立つ。メンズの着こなしも、異なるピッチのマーブル調プリント柄をレイヤードしたり、モチーフの異なるクロシェを上下で合わせたりと、小さな差異を生かしたスタイリングでエレガンスを利かせた。

ハレ

 前回、デジタル配信で初参加したエイチシー・タカシイトウ(城戸孝)は、フィジカルのランウェーで新作を見せた。テーマはパワーポップ。チェックのロングシャツに膝上をロゴプリントのPVC(ポリ塩化ビニル)で切り替えたデニム、グラフィカル柄のカーディガンにダメージ加工のデニムなど、ロゴの表現や単品のディテールにこだわりがつまっているものの、デニムを軸とした着こなしは単調に見える。ハードコアパンクを好む城戸は、その精神で新しいモノを再構築する姿勢で取り組んでいるという。コレクションのムードも含めて創造性ある見せ方が出てくることを期待したい。

エイチシー・タカシイトウ

 台湾から3ブランドが参加した。初参加のセイヴソン(ヅゥチンシン)は、混沌(こんとん)とした世界に潜入する架空の秘密捜査官ミスターミスをテーマに、フィジカルショーを行った。テーラード、ミリタリー、スポーツの機能的な3スタイルを軸に、カットアウトしたトップで素肌をのぞかせボディーコンシャスな魅力を際立たせる。MA-1の袖が付いたボディコンドレスは楕円(だえん)状に開いたフロントにジオメトリックなカットのジャージー。白のテーラードジャケットは、胸元から上がカットされてキャミソール仕立てになっている。グラマーでしたたか、知的な一面も匂わせ、現代版・峰不二子といったところだろうか。フィナーレには、今年6月に日本から台湾へ新型コロナウイルスのワクチンの無償提供が行われたことに感謝のメッセージも。モデルたちは「サンキュージャパン」と入ったTシャツを着て、リラックスムードのユーティリティースタイルを見せた。

セイヴソン

 ジョイアパン(潘怡良)は、今年3月に続く2度目のデジタルショー。前回は装飾性の高いフォーマルドレスをメインとしていたが、その雰囲気はがらりと変わり、現代アートをプリントで取り入れた普段使いのワードローブをユニセックスで見せた。コミカルな動物が描かれたシンプルなシャツドレス。光沢素材と切り替えてヒップホップ風に見せたフーディーやブルゾンもある。ツイギー風のアイメイクにアフロヘア、外ハネのボブヘアなど、60年代を意識したレトロなヘアスタイルとナイトクラブの演出によってカオスな世界を広げた。

ジョイアパン

 初参加のエイ・クライプシス(イー・ファン・チャン)は、東京が大好きとばかりに都内の様々な場所で撮影した動画を配信。男性モデルが、マンションの一角、原宿や渋谷の歩道橋をやんちゃな表情で歩き回る。片側がレイヤード仕立てになったオーバーショルダーのシャツに八分丈のワイドパンツ、肩の縫い目がファスナーで開くMA-1。複数の着方ができるストリートウェアにスピリチュアルなモチーフの刺繍やプリント柄が施され無国籍なオーラが漂う。

エイ・クライプシス

多様な美意識

 韓国から継続参加しているディ_カフェインオム(アビズモジョー)は、スーチングの多彩なアレンジを見せるランウェー形式の動画を配信した。ダブルブレストのジャケットとトラウザーを一体化したオール・イン・ワン、シャツと膝上丈パンツのオール・イン・ワンには、ベルトの切り替えが入り、きちんとしてストリートっぽさも備えたバランスがユニーク。セットアップは三分丈パンツを合わせる。つるりとした足をのぞかせるのは、このブランドの美意識の表れだろう。

ディ_カフェインオム

 カリフォルニアのオークランドから初参加したサイレントパンダ(サミュエル・テイラー)は、インマイヘッドをテーマにストリートスタイルをユニセックスで見せる動画を配信。元大リーガーのテイラーは、ファッションへの情熱とスポーツマンシップの融合に独自性を出す。ジャケットのセンターベントの上に横長のフラップポケットの付いたフクシャピンクのテーラードスーツなど、実用的でチャーミング。女性のモデルはジップポケット付きのスウェットにフリルを2段に重ねたスカート。女性らしさをストレートに出す純粋さがある。デニム類など製品の一部は日本で生産している。

サイレントパンダ

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