楽天ファッション・ウィーク21年春夏 温かみのあるイメージ広がる

2020/10/14 11:00 更新


 楽天ファッション・ウィーク21年春夏は、ブランドそれぞれが自分らしさに向き合い、デジタルの映像配信でも強みを明確に表現したクリエイションや演出が見どころだ。コロナ禍を経て、和らいだ空気の流れを感じさせるシルエットや色のきれいな植物のモチーフ、陽の光などの温かみのあるイメージが広がっている。

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〈デジタル〉

 ザ・リラクス(倉橋直実)は、都内の見慣れた風景を背景にした柔らかな陽の光が差し込む回廊のような空間で、日常に引き付けたユニセックスのデジタルショーを見せた。

 モノトーンのテーラードスタイルを軸に、そぎ落とした作りと線の滑らかさが心地良く目に飛び込んでくる。ジャケットやコートは前シーズンより量感を落とし、ボタンなどの付属を最小限にして若干の緩みを持たせたフォルム。なだらかな曲線を描く肩のラインによって、リラックスした印象と品の良さを両立させている。機能的な作りのアウターも、テーラードアイテム同様の生地の滑らかさと柔らかなドレープで違和感なく合わせる。ワンショルダーのドレスやサロペットでメリハリを出しつつ、程良く体に沿ってドレープするボトムとのバランスで女性っぽく見せる。メンズライクなオーバーサイズのシャツやドレスは、細身のパンツを合わせてアクティブに仕上げた。

ザ・リラクス ©ザ・リラクス
ザ・リラクス ©ザ・リラクス

 タクタク(島瀬敬章)は、初春から夏へと季節の移ろいを感じさせるレイヤードスタイルをユニセックスのデジタルショーで見せた。軸となるのは、タクタク定番のユニフォーム。レディスはクリーム色の開襟のシャツドレスにジャケットとトラウザーのセットアップ。その上にメンズライクなコートを羽織る。梳毛調でソフトな生地が品よく着心地の良さを感じさせる。メンズはユニフォームの作りを応用したジャージーパンツにバミューダパンツを重ね、薄手の機能素材を使ったトレンチコートを軽やかにまとう。

 ショートムービーとして撮影した舞台は夏の浜辺だが、春物を立ち上げる時期の冬景色を切り取った写真を交えて見せた。自粛生活時の思考も反映して、「外に出たくても出られない。人と会いたくても会えない。冬空の下で、人々はなぎさを思い焦がれていたイメージで制作した。服を媒介して、未来に対して前進していく姿勢や希望を見いだしてもらえたら」と島瀬。

タクタク
タクタク

 リト(嶋川美也子)は、デジタルのインスタレーション。朽ちた木材やカットした無垢(むく)材、グレイッシュなわたの入ったクリアボックスを積み上げて演出した空間で「余儀なく残してしまった素材を培地にして、新たに命を吹き込む思いを表現」した。

 目を引くのは、程良い緊張感をもって素肌を感じさせる薄手のテキスタイルだ。メンズライクなストライプ柄のジャケット、ウインドーペーンの入ったドビークロスのプルオーバーといったセットアップ。トラディショナルな気分をピュアホワイトの生地の透け感を生かして軽やかに優しく見せる。ざっくりとしたリネンのシャツドレスなど天然繊維の素朴さを際立たせつつ、コバルトグリーンやサファイヤブルーの配色を生かしてきりりとモダンな女性像に仕上げた。

リト
リト

(須田渉美)

〈フィジカル〉

 ダブレット(井野将之)は夜のフレンチレストランをショー会場に選んだ。テーブルの上にはフォークとスプーン、丸いシルバーのクローシュ(蓋)。それを開けると料理ではなく、VR(仮想現実)ゴーグルが置かれている。「30秒後にゴーグルをお着けください」と静かで不気味なアナウンス、そしてカウントダウンとともにゴーグルの奥で映像が始まる。それは、今まさに座っているレストランを舞台にしたホラー映像。レストランのあらゆるところからゾンビが次々と現れる。現実と映像がシンクロするという演出だ。まもなくゴーグルを外すと、レストランの庭にそのゾンビたちが整列、テーブルの回りを歩き回る。21年春夏コレクションの映像で見せた、着ぐるみの熊がギフトを配るハートウォーミングなストーリーとは真逆の演出。それは、例年のようにハロウィーンパーティーも開けない現状に対する井野からのギフトだ。

ダブレット©ダブレット

 ターク(森川拓野)は新宿御苑の植物園をショー会場に選んで、フィジカルなファッションショーを行った。春夏コレクションのトレンドとなっている自然を感じさせる空間での披露だ。柄のモチーフにもボタニカルが選ばれている。パンツやシャツに影絵のように南国の草木を思わせる柄が描かれる。グラデーションのシャツやジャカードデニムパンツなど抽象的な柄をのせたアイテムも多い。テーラードジャケットは、身頃に飾ったアイレットパーツを外すことで違う着方ができる。身頃にスラッシュ状の切れ込みを入れたり、襟を外してデコンストラクトなフォルムに変えたり。プリントを含めて、プロダクトのクオリティーは若手の中では高く感じられたが、タークならではの個性のエッジをもっと際立たせてほしい。

ターク(堀内智博写す)

(小笠原拓郎)



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