店頭で思いやこだわりどう伝える?

2014/09/25 12:28 更新


《ものづくり最前線》タグやPOPの効果に再注目

 アパレルメーカーで物づくりへのこだわりや思いをウェブサイトだけでなく、店頭でもいかに伝えるかに取り組む動きが出てきた。具体的にはタグやPOP(店頭広告)などを工夫しようという動きがメーンとなる。

 これまで物そのもので見せる、接客で説明することに力の大半を注いできたが、ものづくりに対するメッセージ、思い、特徴を言葉などで伝える効果に注目する動きだ。ウェブサイトとの連動も重要だ。もちろん、商品そのものの価値や思い入れが備わっていなければ、アピールできない。(武田学)

■言葉でもう一押し

三陽商会の「100年コート」につける冊子型下げ札
三陽商会の「100年コート」につける冊子型下げ札

 三陽商会は昨年の「100年コート」で商品のこだわりを下げ札などに紹介し、インパクトのある商品アピールを始めた。自社で蓄積してきたノウハウを結集して企画、生産した商品だけに、視覚、触覚だけでなく、言葉などによってもう一押し魅力を伝えようとタグやPOPの工夫に取り組んだ。

 従来はタグのような下げ札には例えば撥水(はっすい)など機能性のように商品の補足的な内容を記すものだった。しかし100年コートでは企業としてのメッセージ、あるいは商品の本質的なイメージを載せたものにして、アイコンとして活用した。下げ札に使ったのは、10ページの大きめの冊子タイプ。商品のキャッチコピー、各型の写真、13の特徴など商品のこだわりを説明している。

 一般の下げ札に対して大きく、一見邪魔のようだが、視認性が良く、ふと手にとってしまう効果もねらっている。耐久撥水、軽い着心地、リバーシブルライナー、ベルト落ち止めなどの特徴のほか、袖口が擦り切れてもお直しを配慮した袖口ベルトの位置や貫通ポケットなど一見わかりにくい工夫も説明しており、購買動機をくすぐる効果につながっていると見ている。

 さらにPOPやウェブサイト、ユーチューブと連動させ、魅力や話題を発信した。ウェブサイトでも詳しく紹介しているが、ウェブサイトを閲覧しなくても店頭で伝えられるのがポイントだ。

 昨年は国産羽毛を使用し高品質ダウン「京鴨ダウン」を5ブランドの横断企画として販売したが、和紙や羽根を思わせる表面感の共通下げ札を作った。アイキャッチにもなり、商品の〝売り〟がわかりやすくなる。売り場によっては店頭にあんどんを置いて国産の上質イメージを助長した。抜群のプロパー消化率となった。

ものの裏にあるコト

 こうしたタグなど表示の工夫を強めた最初は昨年春夏の花粉プロテクトコートの販売だ。花粉からの保護を、ダイレクトに大きめの下げ札に表示し、店頭で確認しやすくしたことで、売り上げ、消化率に結びついた。

 表示が数字に直結した。スポーツウエアなどでは機能性のタグは普通だが、一般アパレルではタグは格好悪いものとしてなるべく使わず、商品そのもので見せるというのが一般的だ。

 しかし、POPやタグはまず物を見て気に入れば、作り手の思いやこだわりを確認したくなるのではないか。そんな想定から始めたのだが、その効果は確かに感じられた。販売スタッフからの要望もかねてからあり、接客の会話で説明するが、販売スタッフもPOPやタグがあるとプラスアルファの効果を実感できるという。

 「下げ札は格好悪いというイメージや重いなどのデメリットもあるが、足を止めるきっかけにもなる。販売スタッフの接客はもちろんだが、下げ札、POPなどで商品の価値を最大限伝えていくことは、客数増が見込みにくい中で必要だし、効果も見込める」(梅本祐助事業本部ビジネス開発事業部新規事業開発ディヴィジョンサンヨーコート企画グループ主任)と見る。

 

「タイムレスコート」のメッセージ下げ札と「グリーンダウン」の冊子型下げ札
「タイムレスコート」のメッセージ下げ札と「グリーンダウン」の冊子型下げ札
POPでシリーズごとに特徴やこだわりを記した「イッツ・インターナショナル」
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