帝人と関西大学システム理工学部の田實佳郎教授は、都内でポリ乳酸を用いた圧電繊維と導電繊維を組み合わせたウェアラブルセンサー「圧電組紐」を開発し、12日に都内で発表した。
日本の伝統工芸である組み紐(ひも)の構造を生かし、1本の紐で伸縮、曲げ伸ばし、ねじりといった動きをセンシングできる。
組み紐の構造は、一般的な電気ケーブルとほぼ同じため、低ノイズで高感度な信号を検知可能という。現在、グループ内外の企業とでプロジェクトが立ち上がっており、1、2年内に実用化する計画だ。用途開発は帝人フロンティアが担う。
圧電組紐は、芯となる導電繊維にポリ乳酸を用いた圧電繊維を2本クロスしながら巻き付けた構造で、一般的な組み紐と同じ設備、製法で作った物。圧電組紐を引っ張ったり、ねじったりすることで圧電繊維から電気信号が発生する。
電気信号は導電繊維を経由し、小型のコネクターで接続したトランスミッターを通じて、スマートフォンなどのデバイスに無線で送られる。
組み紐には古来から伝わり神事にも使われる飾り結びという結び方があり、基本的な結び方は85種類ある。「それぞれの結び方がどんな方向に反応するかが『組紐理論』として計算されている」と田實教授。
そのため、色々な動きに対して反応する最適な結び方を選ぶことで、「必要な情報だけを検出できるスマートセンサーを作ることができる」という。
例えば、脈動を検出したい場合は「吉祥結び」が適しており、チョーカーなど首輪に巻くアクセサリーにした場合、首の動きや、食事中、咳による振動には反応しない。不要な情報を排除するには通常、コンピューターの処理装置やプログラムが必要だが、圧電組紐は不要だという。
今後、スポーツアパレルやリハビリなどのメディカル用途で実用化を検討するほか、田實教授は「独り暮らしの高齢者や、ペットの見守りサービス用途での実用化に期待している」と強調した。