【パリ=小笠原拓郎】23~24年秋冬パリ・メンズコレクションは、ウィメンズコレクション並みのタイトなスケジュールとなった。それだけ、フィジカルのファッションウィークに戻ってきたブランドが多いというポジティブな見方もできる。しかし、ショーの中身でいうと、エンターテインメント重視の予定調和のようなコレクションが増え、見る者に服で何かを考えさせるようなクリエイションは減っている。
【関連記事】23~24年秋冬パリ・メンズコレクション 現代のミニマルスタイルを探る
カラーはアイテムの解体、再構築で、新しい美しさを探るコレクション。カーディガンにジャケットの裏地がレイヤードされ、ジャケットの身頃にファイブポケットパンツの身頃がくっつく。トレンチコートのボディーには毛芯やスレキがのぞき、ジャケットは片側の袖が取れて肩パッドがのぞく。袖口からは、違う素材の袖が見える。
阿部潤一はこの間ずっと、現代のミニマリズムを探し続けてきた。ミニマルな美しさの中にノイズを入れてどう調和させるのか。そんなクリエイションだ。90年代のミニマリズムと同じことをやっても、それは新しい美しさとは言えない。「ヘルムート・ラング」や「ジル・サンダー」のミニマリズムを経て、今の時代に何ができるのか。そんな思いが阿部にはある。新しいミニマリズムを探るのに、いろんなものを足し引きしながら、ノイズと調和のバランスを探る。それは単純に90年代のミニマリズムをなぞるよりもはるかに難しい作業。そこに共感はあるのだが、阿部の作るその先の新しい展開や違う切り口も見てみたいと思うシーズンでもある。
ダブレットのショー会場の屋外スペースにはたくさんの風船が揺れ、着ぐるみを着たたくさんのキャラクターたちが観客を招き入れる。キャラクターのウェルカムメッセージが終わると、轟音(ごうおん)とともにモデルたちが登場する。それまでウサギの着ぐるみを着ていたその人こそが、ファーストルックのモデル。アミューズメントパークに作られたほのぼのとした日常、それとは打って変わっての個性的なスタイルがコントラストを描く。
この記事は有料会員限定記事です。繊研電子版をご契約いただくと続きを読むことができます。
すべての記事が読み放題の「繊研電子版」
単体プランならご契約当月末まで無料!